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2018.10.16

媒体としての価値を高めるためにキュレーションメディア運営に必要なポイントとは

インターネット上で情報収集する際に便利なものの一つがキュレーションメディアです。特定のテーマごとで情報が集められているため、自分の関心事について調べるにはとても効率的なサービスですが、既存の情報をもとにするというそのコンセプトから、社会の厳しい視線が向けられているという現状も存在します。 そのため、キュレーションメディアの運営者は、メディアとしての価値ある情報発信をするため努力しています。今日はキュレーションメディアの価値を高め、メディアの運営を成功させるために必要な視点や工夫についてご紹介します。

キュレーションメディアの現状

そもそもキュレーションメディアとは何でしょうか。冒頭で述べたとおり、特定の切り口でインターネット上のコンテンツを収集して選定し、つなぎ合わせて公開するメディアを指します。その切り口はニュース、生活情報、女性、グルメ、趣味、経済など多岐に及びます。

基本的なキュレーションメディアのビジネスモデルは、記事を量産することでできるだけ多くの来訪者を集め、効率的に広告収入を得ることです。しかし、少し前に大手キュレーションメディアの著作権違反や医薬法違反等が社会問題となったこともあり、人々がその情報を見る目は非常に厳しくなっています。そのため多くのキュレーションメディアの運営者は、良質な記事、正確な情報を発信して媒体としての価値を高めることに取り組んでいます。

先の問題があったことから、キュレーションメディアの運営者は他人の記事や写真を無断で複製することによる著作権法違反や、特定の商品・サービスについて医学的な効能や効果をうたうことは薬機法違反などには十分に留意しているでしょう。他にも業界団体が定めたガイドラインに従った表現を用いること、記事広告の場合はPRと明記すること、引用する場合の書き方・・・といった細かな決まりごとが存在しますが、こちらも同様です。

しかし、媒体としての価値を高めるためには上記のルールを守るだけではなく、何より記事の質が肝要です。内容に虚偽がないか、不正確な情報ではないか、あるいはそもそも価値のある情報と言えるのか。チェックプロセスに重点をおくメディアが増えています。

キュレーションメディアの運営者が抱える課題

このように法律や社会のルールに適応してきたキュレーションメディアの運営者は、今どのような課題を抱えているのでしょうか。アディッシュのお客様や、お問い合わせをいただく中で頻繁に出てくるのが以下の課題です。

・業務負荷

メディアの性質上、常に記事を作り続けているような状態なので、ギリギリの人員では疲弊してしまいます。もしチームを管轄するのが一人という体制になっているとしたらかなり危険です。どれだけ優秀な人材でも、先入観にとらわれたり集中力の限界などでチェックの精度には疑問符がつくでしょう。

また、ライティングチーム、チェックチームと分けて体制を作っているとしても、チェックに割ける時間が十分でないと甘くなってしまう可能性もあります。そのため、第三者の視点を入れチェックの精度を上げるために、ダブルチェックを外部へ委託することが良くあります。

・ライターの育成

社内でお抱えのライターがいる場合には、メディアの方針に従ってガイドラインやマニュアルを定め、フィードバックを通じて教育していくことで効率的に回すことが可能です。しかし、外部にライターがたくさんいるような仕組みの場合、ディレクション担当者とライターとの関わり方にもよりますが、細かなフィードバックを行い、価値観の共有を行うような場はなかなか作れません。そのために記事の品質管理には苦労しがちです。

・コスト

膨大な量の記事を作成し、その質を担保するためには、ライティング、ディレクション、チェックと各プロセスで一定数の人員コストが発生します。全プロセスがマニュアル化されて作業に落とし込まれているケースは稀なので、現場を回すためにスペシャリストをアサインしたり既存スタッフを教育するなどして、さらにコストが膨らむというケースもあるでしょう。

・業界の動きをキャッチアップできる体制の整備

インターネット上の常識は変化し続けています。以前は問題なかった手法が、何らかの事件をきっかけにネット上の倫理観からタブーとして扱われることがあります。こうした業界の最新動向を把握していないと他メディアから遅れを取り、また炎上をひき起こすリスクにも繋がります。とはいえ、なかなかその最新情報のキャッチアップに余力を割けるメディアは多くはありません。

・運営者の偏った視点

運営者の価値観によって取り扱う情報や、発信の仕方が異なるのは当然のこと。しかし、自分たちが持っていない視点には疎くなりがちという問題も確かに存在します。

「そういう意図ではなかった」
「そんな捉え方があるなんて考えもしなかった」
炎上した企業のコメントで見受けられる言葉ではないでしょうか。内輪の常識が読者や社会の多様な価値観と乖離しないよう、意識を向けておきたいところです。

いかがでしょうか。すでにメディアを運営されている方ならば一つや二つ、思い当たる課題はあるのではないかと思います。

メディアを成長させるために運用者は何を考えるべきか

このようにキュレーションメディアの運営には様々な課題がつきものです。これらの課題に向き合い、価値あるメディアへ成長させていくためにはどうしたら良いのでしょうか。

筆者が考える結論はメディアとしての方針を打ちたてることと、充実した体制づくりの2点です。

1.メディアとしての方針を持つ

企業の経営者がビジョンを定めるのと同様に、メディアの運営者も方針を打ちたてるべきです。これはメディアの根本を支える価値観とも言えます。インターネットメディアとしてのブランドを高めていくためには、テーマ選定や記事作成に一貫した価値観を持って取り組み、統一性のあるサイトを作り上げて行くことが重要です。そのために記事作成方針を設け、統一基準を作りましょう。

例えば、以下のような基準です。

 ・必ず正確な情報を伝える
 ・情報に矛盾がないか、リアリティがあるか、常識のもと確認する
 ・読者にとって有益な情報であるか考える
 ・読者が不利益を被らないよう配慮して情報を伝える

当たり前のことかもしれませんが、これらを言語化し、チームに徹底的に浸透させることが大変重要です。

2.充実した体制づくり〜人手を惜しまず、役割分担を明確に

どのようなメディアでありたいか、どういった情報を伝えていくのか、方針を定めた上で、もう一つ重要な決め事が「体制」です。

先に挙げた課題の多くは、体制が不十分であることと紐づいています。キュレーションメディアの運営体制は最小限の人数で組まれているケースが多く、出来たてで若いメディアの場合はなおさらでしょう。しかし、どんなに最小限の人数と言ってもライターや編集者、ディレクターとチェック担当者が一緒だと十分なパフォーマンスを発揮することはできません。内容チェックや公開可否の判断については、そのメディアの定めた方針を理解している作成者以外の人物がフラットな視点で関われるよう体制を充実させる必要があります。

なお、十分な体制とは単純にリソースがたくさんあると言う意味ではなく、必要とされる業務に適切な人材をアサインできる状態を指します。必要とされる業務について、わかりやすくするためにいくつか具体的な話でご紹介したいと思います。

(1)マニュアルにないことが起きた場合は柔軟に対応を
多くのメディアには記事作成マニュアルが存在するでしょう。しかし、このマニュアルは作って終わりではなく、常にアップデートされます。

例えば、製品の効能に関する表現についてマニュアルで定められているとします。しかし「”肌が白くなる”と直接的に効能をうたう表現がNGならば、代わりにこんな表現はどうだろう?」とライターが新しい表現を創出して提案するようなことがあります。そんなときは杓子定規に既存のマニュアルで判断するのではなく、その時どきの常識・良識に従い、改めて可否を考えることが大事です。結果的にNGリストが一つ増えるだけと言う可能性もありますが、印象的な言い回しが生まれるならばメディアにとっても意味のあるチャレンジと言えるのではないでしょうか。

ちなみに、表現は単語や言い回しだけでなく、全体の構成や前置きされている言葉にまで注意を払う必要があります。例えば、ある特定の商品の特徴に触れる場合、書く場所によってはそのブランドの全商品に共通の特徴であるかのように誤解を招く可能性があるからです。

ほかに、情報の参照元も変化が頻繁にある部分です。例えば、特定の業界・テーマに特化した新しいサイトが出現した、あるいは公式サイトだけでは情報が不足しておりSNSや他のサービスへその会社(店舗)が掲載している情報があるという場合に、参照元として良いか柔軟に基準設定を行う必要があります。そして判断後はすぐに作業へ反映できるよう、すみやかにチェック担当者にもライターにも共有しなくてはいけません。

(2)常に最新の正しい情報を
掲載済みの記事の中には、期間限定のキャンペーン情報やすでにアップデートされていて内容が古くなってしまっていると言うものも存在しがちです。メディアとしては、古い情報で読者を混乱させるわけにはいきません。定期的にチェックし、アップデートする必要があります。

(3)リスクに備えて炎上へのアンテナは高く
日々の記事作成業務に必須とは言えませんが、質の高いメディアの運営者にお勧めしたいのが「炎上へのアンテナを張ること」です。対象は炎上したり、議論の的となっているような商品・素材・人・企業・・全てです。例えば、紹介した商品に健康被害を及ぼすものが入っていたと言うようなケースです。取り上げたことがメディアの印象や発表した情報の価値にも悪影響を及ぼすリスクがあります。

これらのイレギュラーケースや突発的な事案に柔軟かつスピーディに対応できるのは、メディアが掲げた指針を理解するチームが存在し、明確な役割分担の下で各々の業務を進められる環境がある場合だけです。明確な方針の下、十分な体制が存在していれば、業務負荷は確実に減り、ライター育成や業界の最新動向のキャッチアップも容易になります。

そして最近は、チェックプロセスやリスク調査などの業務を外注し、第三者を巻き込むメディアも増えています。もちろん業務負荷の解決という側面もありますが、チェックの厳格化、そして多様な視点を取り入れるという点にも期待があるのではないでしょうか。

まとめ

とかく最小限のチームで運営されがちなキュレーションメディア。しかし、メディアが定めた方向性に従い、価値あるコンテンツを提供するためには十分な人数と明確な役割分担が必要です。そして、コンテンツ作成の作業量が膨大なことについ目がいきがちですが、解決すべきはその業務効率だけではありません。新しいチャレンジへ積極的な姿勢を持ち、同時にリスクにも備えるーそうした価値あるメディアへと進化するためには、外の情報を追いかける余力が鍵だと言えます。

そのため、運営体制については一度見直して見ることをおすすめします。調整可能なリソースではどうしても足りないという場合は、前述したようにチェック業務やリスク調査を切り出し、外部へ委託するという方法もあります。実際、アディッシュでもキュレーションメディアの記事審査支援サービスを実施しています。マニュアルの改善やチェックプロセスの汎用化、ソーシャルリスニングを用いたリスク対策まで幅広くお手伝いしています。詳しい内容にご興味のある方はこちらからお問い合わせください。

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この記事を書いた人

アディッシュのモニタリングソリューション「MONI」

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アディッシュのモニタリングソリューション「MONI」

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