インターネットにおける誹謗中傷対策の強化として、政府が「プロバイダ責任制限法」改正の方針であることが報じられました。これにより各SNS運営企業は誹謗中傷の被害の申し立てを受けた場合に速やかな削除を含めた対応が義務付けられます。
ネット上の誹謗中傷の課題、そしてサービス運営企業ができる対策について考えます。
政府はインターネットにおける誹謗中傷対策の強化を目的として、「プロバイダ責任制限法」改正の方針を固めたと一部メディアが報じています。改正案の国会提出も近いとの見通しで、対策強化の動きが加速していると見られています。
「プロバイダ責任制限法」はネット上で誹謗中傷などを受けた被害者が投稿者の情報開示をSNSの運営企業に求める手続きについて定めています。2022年10月の改正では複雑だった開示請求の手続きが簡略化されたことも話題になりました。
今回の改正における主なポイントは以下の通りです。
1.不適切な投稿の削除申請があった場合の迅速な対応
2.投稿を削除する判断基準の策定と公表
3.削除申請の手続きや窓口の公表
1つ目の「不適切な投稿の削除申請があった場合の迅速な対応」については、一定期間内に申請者に対して対応結果の通知が求められます。
また3つ目の「削除申請の手続きや窓口の公表」については、X(旧Twitter)など海外のSNSの運営企業を想定し、申請方法のわかりにくさ解消を目指すものと見られています。
(※2024年1月時点での情報です)
SNSなどインターネットコミュニティにおいては、誹謗中傷対策が大きな課題とされてきました。誹謗中傷を発見した際に即削除するという対応も考えられますが、また別の問題を生じさせる可能性があります。
投稿を削除する上で留意するポイントとして以下が挙げられます。
1.削除された投稿の投稿者の権利
誹謗中傷の被害者救済の必要性がある一方で、誹謗中傷をしてしまった投稿者の「表現の自由」とのバランスが重要になります。サービス運営企業は投稿を削除することで「表現の自由を脅かした」と評価されるリスクがあります。
2.ユーザー間のトラブルにおける公平な判断
ユーザー同士のトラブルの結果、どちらかが誹謗中傷した場合に該当投稿の削除で事態が収まらない可能性があります。トラブルの原因がもう一方にある場合、公平さに欠けるとして不満を抱えるかもしれません。
3.無自覚な誹謗中傷を削除する懸念
誹謗中傷の定義については様々な考え方があります。自分の投稿が誹謗中傷という認識のない投稿者は削除された場合に戸惑うことでしょう。投稿の内容だけでなく、投稿された状況によっても誹謗中傷か否かの評価は分かれると考えられます。
4.公人と私人で判断を分けるべきか
公人であっても誹謗中傷は認められるものではありません。一方で政治家など著名人に対する非難批判や意見を誹謗中傷として削除されるという懸念を持つユーザーもいると考えられます。
以上のポイントに共通するのは「多くの利用者が納得できる判断基準」が求められているということではないでしょうか。
今回検討されている「プロバイダ責任制限法」改正のポイントにもなっていますが、削除判断の基準の策定は必須と言えます。その際に基準は以下の点を押さえる必要があります。
・誹謗中傷の定義に妥当性があるか
・判断基準に納得した上でユーザーは利用しているか
・判断基準は広く周知されているか
アディッシュでは誹謗中傷対策としてのモニタリングサービスを提供しています。判断基準の策定サポートと周知のためのアドバイスも行っていますのでぜひご相談ください。