2024年3月1日にブロバイダ責任制限法の改正案が閣議決定されました。情報流通プラットフォーム対処法に法律名が変わり、誹謗中傷等の投稿の削除要請があった場合は調査をして、一定期間内に削除するか否かを通知しなければならなくなります。
ニュースで取り上げられる機会は少ない話題ですが、指定された対象企業か否かに関わらず、メディア運営事業者は理解を深めておきましょう。
誹謗中傷を受けた被害者を救済をするため、これまでのプロバイダ責任制限法に、「対応の迅速化」と「運用状況の透明化」が加えられました。大規模特定電気通信役務提供者に該当する事業者には8つの義務が課せられます。
今回はメディア運営事業者向けに情報流通プラットフォーム対処法についてわかりやすく解説します。
情報流通プラットフォーム対処法を理解するためにも、まずは元となるプロバイダ責任制限法についておさらいしておきましょう。
プロバイダ責任制限法とは、
について定めた法律です。
掲示板やブログ、SNSで誹謗中傷された際に、プロバイダーへ発信者情報の開示請求を行うための法律となっています。
プロバイダ責任制限法は掲示板やブログ、SNSで誹謗中傷された際に、プロバイダーへ発信者情報の開示請求を行うための法律です。
当初は、発信者情報を開示してもらうために、2度の裁判手続きが必要になるなど複雑な手続きが問題となっていました。そのため、2022年の法改正で1度の裁判手続きで開示請求ができるようになる等、手続きが簡略化されました。
被害者が泣き寝入りせずに救済される様、プロバイダ責任制限法は全18条に改正されています。
以前の改正で手続き自体は簡略化されました。しかし、被害者が誹謗中傷を受けているにも関わらず、プラットフォーム運営者に相談しても、そもそも対処してもらえない等の別の問題が浮き彫りになったことが法改正の背景にあります。
これらの問題を解決するために、プロバイダ責任制限法は情報流通プラットフォーム対処法へ改正されることになりました。
情報流通プラットフォーム対処法は、誹謗中傷を受けた被害者を救済するために「対応の迅速化」と「運用状況の透明化」がプロバイダ責任制限法に加えられた法律です。大規模特定電気通信役務提供者に該当する事業者には8つの義務が課せられます。
公布日 | 2024年5月17日 |
施行日 | 政令で定める日(公布から1年以内) |
対象者 | 大規模特定通信役務提供者 |
主な変更点 | (1) 対応の迅速化 ・削除申出窓口・手続の整備・公表 ・削除申出への対応体制の整備 ・削除申出に対する判断通知(14日以内) (2) 運用状況の透明化 ・削除基準の策定・公表 ・削除した場合の発信者への通知 |
大規模特定電気通信役務提供者とは、ニュースサイトやSNS、掲示板などを提供し、一定基準を超えたユーザー数が利用しているサービスの提供者を指します。一定基準を超えたユーザー数がどの程度なのか明確にはされていませんが、Yahoo!JAPANやX、Instagramなどを運用する企業が対象になるのではないかと言われています。
大規模特定電気通信役務提供者に該当する場合は8つの義務が課せられます。
大規模特定通信役務提供者に該当する場合は、指定を受けた日から3ヶ月以内に総務大臣に届出を提出しなければなりません。また届出事項に変更があった場合は、速やかに変更届出を提出する必要があります。2024年7月時点で、届出事項の内容は決まっていません。(情報流通プラットフォーム対処法21条1項)
被害者が誹謗中傷などの投稿の削除申請を行えるように、申請窓口を公表しなければなりません。また申請窓口は3つの要件を満たす必要があります。(情報流通プラットフォーム対処法22条1項)
[申請窓口の3つの要件]
申請者から誹謗中傷などの投稿の削除申請を受理した後、プライバシー侵害、名誉毀損などの権利を侵害する投稿が実際にされているかを調査しなければなりません。(情報流通プラットフォーム対処法23条)
大規模特定電気通信役務提供者は、上記の通り、申請者から誹謗中傷などの投稿の削除申請を受理した後、プライバシー侵害、名誉毀損などの権利を侵害する投稿がされているかを調査しなければなりません。
この時、権利侵害に関する法的知識などの専門知識を持つ侵害情報調査専門員を配置する必要があります。また、侵害情報調査専門員の最低人数も定められる予定です。(情報流通プラットフォーム対処法24条1項2項)
大規模特定電気通信役務提供者は権利侵害に係る調査後、14日以内に申請者に対して削除に応じるか否かを通知しなければなりません。掲示板やSNSで誹謗中傷の投稿がされると、拡散されて被害が拡大する恐れがあります。そのため、削除申請日の受理日から申請者へ対応方法を通知するまでの日数が取り決められました。(情報流通プラットフォーム対処法25条1項)
誹謗中傷をされた被害者が、どのような内容であれば情報を削除してもらえるのかを判断できるように、投稿の削除基準を公表する必要があります。その際には、情報流通プラットフォーム対処法に適合するように努めなければなりません。(情報流通プラットフォーム対処法26条1項、2項)
プライバシー侵害、名誉毀損などの権利を侵害する投稿を削除する場合は、発信者にその旨を通知しなければなりません。発信者が納得できるように、投稿削除の基準のどれに該当するかを説明する必要もあります。(情報流通プラットフォーム対処法27条前段)。
年1回、実施状況を公表しなければなりません。公表する内容は4つあります。
[公表すべき内容]
大規模特定電気通信役務提供者の義務をご紹介しましたが、検討されたものの表現の自由などの関係により盛り込まれなかった内容もあります。
これらは表現の自由を考慮して、情報流通プラットフォーム対処法に盛り込まれませんでした。
情報流通プラットフォーム対処法に違反すると罰則が課せられます。
総務大臣による是正勧告や命令に従わない場合は、1億円以下の罰金が課せられます
情報流通プラットフォーム対処法に改正される上で、よくある質問をご紹介します。
プラットフォームのメディアポリシーを作成する等、投稿者に最低限のルールを守ってもらえる環境をつくる必要があります。
削除申請があった場合は、誹謗中傷などの被害が拡大する前に対応を促すために、14日以内までに削除に応じるか否かを通知しなければならないと説明しました。
しかし、総務省による迅速な対応が7日以内を想定しているとのことです。そのため、自社サービス特性等を踏まえて、最適な運用を検討する必要があります。
現時点では、社内限定とは記載されておらず、誹謗中傷などの権利侵害に関する十分な知識を持つ方を配置する必要があると記載されています。また、プラットフォーム利用者数などで侵害情報調査専門員の人数が決まります。そのため、今後の発表を見て誰を選任するか決めるとよいでしょう。
今回の法改正やその他昨今の動きにより、大規模特定電気通信役務提供者か否かに関わらず、サービス運営者への周囲からの目は厳しくなっていきます。
適切なリスク対策に悩んだときは、アディッシュへご相談ください。
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ソーシャルリスクモニタリング | FacebookやX(旧Twitter)、Instagram、Youtube、TikTokなどのSNS上での企業リスクや、広告等で発信する情報のリスクモニタリングを365日体制でモニタリングします。 |
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サービス支援・代行 | 誹謗中傷リスク対策のサポートをします。コンサルティングも可能です。 |
誹謗中傷の削除依頼があった場合に、事業者が適切に対応するように、プロバイダ責任制限法は情報流通プラットフォーム対処法へ改正されることが決まりました。大規模特定電気通信役務提供者に該当する場合は、以下の内容に対処しなければなりません。
情報流通プラットフォーム対処法に備えたい方や、メディア運営方法を見直したい方は、ぜひアディッシュにご相談ください。