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マイナンバーカードで強化されるマッチングアプリの本人確認

デジタル庁の取り組みから見る“安全なサービス設計”の方向性

はじめに|利便性とリスクの競合

マッチングアプリは、いまや特別なサービスではありません。
出会いの手段として広く浸透し、多くの人にとって日常的なインフラとなっています。

一方で、その利便性の裏側では、様々なリスクが積み重なっています。
例えば、プロフィールは正しいのか。やり取りしている相手は本当に実在する人物なのか。
こうした不安は、利用者個人の問題にとどまらず、サービス全体の信頼性に直結する問題です。

実際、なりすましや詐欺といったトラブルは後を絶ちません。
このような背景を受け、デジタル庁はマイナンバーカードを活用した本人確認の強化に向けた取り組みを進めています。

本記事では、デジタル庁ニュースの内容をもとに、政策の背景と具体的な施策、そしてサービス運営における実務的な示唆を整理します。

マッチングアプリ利用の拡大と、安全性に対する期待の変化

マッチングアプリは急速に普及しています。
こども家庭庁の調査によると、40歳未満の既婚者のうち約4人に1人がマッチングアプリを通じて出会い、結婚に至っているとされています。(※)

この数字は、マッチングアプリが、社会的に認知された出会いの手段であることを示しています。
一方で、利用者が増えたことで、リスクも同時に顕在化しています。
典型的なトラブルとしては、なりすまし登録や既婚者による独身偽装、ロマンス詐欺、金銭トラブルなどが挙げられます。

特にロマンス詐欺については、警察庁も注意喚起を行っており、被害額の大きさや手口の巧妙化が社会問題となっています。

これらの問題に共通しているのは、「相手の正体が確認できない」という構造です。

つまり、サービスの安全性を高めるためには、単に利用規約を整備するだけでは不十分であり、“誰が利用しているのかをどこまで確実に確認できるか”が問われているのです。
※出典:「簡単、確かな本人確認にマイナンバーカードの活用を」(デジタル庁)

デジタル庁と業界団体による取り組みの概要

こうした背景を受け、デジタル庁は2025年6月、マッチングアプリ事業者の業界団体である「恋愛・結婚マッチングアプリ協会」と協定を締結しました。(※)

この協定では、マッチングアプリにおける安全性向上を目的として、複数の施策が検討・推進されています。

中心となるのが、マイナンバーカードを活用した本人確認の強化です。

従来の本人確認は、身分証画像の提出と目視確認が主流でした。
しかしこの方法では、偽造や使い回し、なりすましといったリスクを完全に防ぐことは困難です。

これに対し、マイナンバーカードのICチップを活用することで、より高い信頼性を持つ本人確認が可能になります。
さらに、年齢確認の精度向上や、将来的には独身証明の活用も視野に入れた設計が検討されています。

重要なのは、この取り組みが単なる技術導入ではなく、
サービス全体の信頼性を底上げするための制度設計として位置づけられている点が重要です。
※出典:デジタル庁ニュース「マイナンバーカードの活用によるマッチングアプリの安全性向上に関する取組」

マイナンバーカード活用の具体的なユースケース

デジタル庁の発表では、マイナンバーカードを活用した具体的な利用シーンも示されています。

まず、アプリ登録時の本人確認です。
ICチップを用いた認証により、本人確認・年齢確認・身分確認を一体的に行うことが可能になります。

これにより、未成年の不正利用や、他人の身分証を使った登録といったリスクの低減が期待されます。
さらに注目すべきは、独身証明に関する取り組みです。

アプリ利用者の調査では、男性の83.8%、女性の97.4%が「相手が独身であることを証明してほしい」と回答しています。
この結果は、利用者が求めているのが単なる利便性ではなく、
関係性の前提となる信頼であることを示しています。

マイナンバーカードを基盤とした情報連携により、こうしたニーズに応える仕組みが実現すれば、マッチングアプリの利用体験そのものが大きく変わる可能性があります。

サービス運営者にとっての本質的な示唆

今回の取り組みを、単なる本人確認強化として捉えるのは不十分です。
むしろ重要なのは、「安全設計の考え方そのものが変わりつつある」という点です。


本人確認は“信頼の基盤”

本人確認はサービスの前提条件、すなわち信頼の基盤として位置づけられています。

これは、ユーザー同士が相互に信頼できる環境を構築することが、
サービス価値そのものに直結する時代に入っていることを意味します。


リスクは「登録後」に顕在化する

もう一つ重要なのは、リスクの多くが登録後に発生するという点です。

詐欺行為や外部サイトへの誘導、不適切なユーザー行動は、本人確認をすり抜けた後に起こります。

つまり、本人確認だけでは安全性を十分に担保することができません。

そのため、実務としては以下のような運用設計が不可欠になります。

  • ユーザー行動のモニタリング

  • 通報内容の精査と迅速な対応

  • 不正検知ロジックの継続的な改善

このように、「入口」と「利用中」の両方で安全を設計する必要があります。


「確認」と「監視」を分断しない設計へ

多くのサービスでは、本人確認と運用監視が別の仕組みとして存在しています。
しかし実際には、この2つは連動してこそ意味を持ちます。

例えば、本人確認の結果とユーザー行動を組み合わせることで、より精度の高い不正検知やリスク判断が可能になります。

今後は、本人確認・行動データ・通報情報を横断的に活用する設計が、
安全性を高めるうえで重要な要素となっていくでしょう。

まとめ|「確認する」から「信頼を設計する」へ

マッチングアプリは、すでに社会に不可欠なインフラとなっています。
だからこそ、その安全性は個別サービスの問題ではなく、社会的な課題として捉える必要があります。

今回のデジタル庁の取り組みは、マイナンバーカードを活用することで、本人確認の精度を高めるだけでなく、
サービス全体の信頼性を底上げする方向性を示しています。

そして重要なのは、その先にある設計思想です。

本人確認だけではなく、利用中の行動モニタリングや不正対策を含めて、
一貫した安全設計を構築すること。
それが、これからのオンラインサービスに求められる前提条件になりつつあります。

本人確認や不正対策、ユーザー行動のモニタリングなど、オンラインサービスの安全設計についてお悩みの方は、ぜひアディッシュにご相談ください。