アディッシュでは先日、ENEOS野球部、女子バスケットボールチームENEOSサンフラワーズの皆様に向けてSNSリテラシー勉強会を実施しました。
今や、スポーツ選手がSNSを通じてファンとつながるのは当たり前の時代です。
ENEOSサンフラワーズ様にも、数千人から数万人規模のフォロワーを持つ選手が多く所属しています。
一方で、SNSではちょっとした一言や意図しないやり取りがきっかけで批判や炎上に発展するケースも少なくありません。「何に気をつけるべきなのか」「どこまでが許されるのか」といった点について、現場でも明確な基準がわからず、戸惑いが生じているのが実情です。
こうした背景を踏まえ、スタッフ・選手の皆さま一人ひとりがSNSを適切に活用し、安心して情報発信できるようになることを目的に「SNSリテラシー勉強会」を開催いたしました。
本勉強会では、SNSにおける基本的なマナーや炎上事例の解説に加え、発信者としての意識の持ち方、フォロワーとの向き合い方など、現場で実践できる具体的な内容を取り上げました。
講師による講義中の一場面(会場:ENEOSサンフラワーズひまわり寮体育館)
SNSリテラシー勉強会には、選手を支えるさまざまな立場の方々にもご参加いただきました。
今回インタビューにご協力いただいたのは、現場にもっとも近い存在ともいえるマネージャーの川口様です。
チームでは、ヘッドコーチをはじめ、マネージャーや寮母さんなど、多くのスタッフが一丸となって選手たちを支えています。
そんな中で川口様は、寮で選手と生活を共にしながら、チーム全体を統括するマネージャー小松様のもと、スタッフと選手の間をつなぐ“架け橋”として活躍されています。
選手が規律ある生活を送れるよう細やかに目を配るとともに、時には問題を拾い上げ、誰もが率直に話し合える場をつくることも大切にされています。
インタビューにご協力いただいた川口 結菜 様(ENEOSサンフラワーズ マネージャー)
では、実際にSNSリテラシー勉強会を経て、川口様の目には選手たちの変化はどのように映ったのでしょうか。
印象に残ったシーンや、その後に起きた変化についてもお聞きしました。
川口様:
勉強会後、何人かの選手と話をしましたが、「面白かった」「興味深かった」という声がちらほら聞かれました。特に盛り上がっていたのが、「これはアンチが反応しそう?炎上しそう?」といった内容をクイズ形式で考えるパートです。
特に、普段あまりSNSを使わない選手は「これは炎上しないだろう」と予想したものが実は炎上の原因になると知り、驚く場面もあったようです。
勉強会以降、実際に炎上トラブルなどが起きたわけではありませんが、「これって炎上するんじゃない?」といった会話が自然と出てくるようになったのは大きな変化だと思います。こうした話題がスタッフだけでなく選手同士の間でも出ている様子を見ると、勉強会で学んだことが意識に残っているんだなと感じます。
インタビュアーコメント:
勉強会後のスタッフ・選手の皆さまの意識の変化について伺うなかで、改めて実感したのは、単に真剣に学ぶ機会を設けることだけでなく、日常の中で自然に「あ、これちょっと危ないかも?」といった意識が根付くことの重要さです。
炎上のリスクに対し「フラグが立つ」ことで、初めて具体的な注意や行動に繋がるため、こうした日常的な気づきの積み重ねが、結果的に大きな効果をもたらすと考えています。
今回の勉強会がそのような前向きな意識変化の一助となれたのであれば、私たちとしても大きな手応えを感じる機会となりました。
このような前向きな意識の変化が見られる一方で、選手個人がSNSを通じて発信力を持つ現代においては、マネジメント側としてより丁寧なサポートや配慮が求められる場面もあるのではないでしょうか。
次に、選手のSNS利用に関して普段から気をつけている点や懸念しているリスクについてお聞きしました。
川口様:
私たちのチームは、企業のバックアップを受けて活動しているため、社会的な影響や企業の立場にも配慮が求められます。
状況に応じてSNS発信には特に慎重になるよう声をかけることもあり、選手のSNS活動はもちろん、企業の動向も含めて広い視点でリスクを捉えることを日頃から意識しています。
インタビュアーコメント:
川口様のお話からも、選手への声かけに丁寧な配慮がなされていることが印象的でした。
単に発信を控えるよう伝えるのではなく「どうしてそれが注意すべき内容なのか」、「どんな流れで炎上につながる可能性があるのか」といった背景をきちんと伝えることで、選手自身も納得して行動できるよう心がけているのだそうです。
こうした丁寧な対応は、リスクへの意識が自然と育まれると同時に、選手たちが思わぬ誤解や心ない批判にさらされることを未然に防ぐ面でも、大きな役割を果たしているように感じました。
選手が発信する際のリスク意識について伺ってきましたが、一方で、フォロワーが多い選手ほど、自らの発信に対する反応をどう受け止めるかという点も、無視できない課題と言えます。
続いては、SNS上での応援と批判の受け止め方、そして心ない言葉への向き合い方について伺いました。
川口様:
毎年5〜6月頃にリーグ(※)で新人研修を行っていて、その中でSNSに関するセミナーも実施してくださっているんです。新しく入ってきた選手たちは、そこでSNSに対する意識を引き締めるきっかけをもらえていて、ある意味、意識の土台を作るような機会になっていると感じます。自分の発信がどう受け取られるかを考える、最初の気づきの場になっているのではないかと思います。
※バスケットボール女子日本リーグ(Wリーグ)
川口様:
自分がしんどいときは、SNSから離れるようにと伝えています。
怖いもの見たさで見たくなる気持ちもあるかもしれないけれど、それで傷付くのであれば、メンタルを保つためには、見ないのが一番良い。離れるのが一番だと話しています。
あまりにも陰湿な内容であれば、守ってくれる立場の人はたくさんいるので、迷わず相談してほしいと伝えています。
会社だけでなく、リーグ全体としても選手を守る体制は整っていて、決して一人で抱え込む必要はないということ、味方になってくれる人は多くいるということをしっかりと伝えるようにしています。
また、SNSの仕組みとしても、Instagramは設定でフォローしていない方からのメッセージは自動的に別のフォルダに振り分けられる仕様になっています。プロアカウントの自動フィルター機能もあるため、選手たちは過度に攻撃的なメッセージに触れずに済んでおり、こうした機能は一定の助けになっています。
インタビュアーコメント:
選手が安心してSNSと向き合える環境づくりが進む一方で、発信する側としての意識や周囲の支援体制の在り方も、引き続き重要なテーマとなっています。
最後に、これからのSNS活用に関して、理想的な姿や必要だと感じている支援、取り入れたいサービスなどについて伺いました。
川口様:
今後も、こうしたSNSに関するセミナーを受けさせていただける機会があるのであれば、ぜひ継続してお願いしたいと思っています。毎年1回でもそういった学びの場があることは、選手たちのインプットにつながる大切な機会だと思います。
チームは常に流動的な環境なので、今年セミナーを受けた選手が翌年にはいないかもしれませんし、逆に今年は受けられなかった新人が翌年に加入することもあります。だからこそ、毎年全員に受けてほしいですし、そうした継続的な機会があることが大切だと思います。
また、リーグ全体で外国籍の選手が増えてきていて、私たちのチームにもアメリカから来た選手が加わりました。もともと日本代表経験のある選手も多く在籍していることもあって、海外からのアクセスは比較的多いチームだと思いますし、アジア圏にファンを持つ選手もいます。
そうした中で、日本人にとっては何気ない表現でも、海外の方にとっては侮辱と受け取られるような内容になってしまう場合があります。
今後さらにフォロワーが世界中に広がっていく中で、SNSに関するセミナーでも、「海外ではこういう表現がNGなんだよ」といったグローバルな視点での学びを取り入れていただけたら、より実践的で嬉しいなと思います。
インタビュアーコメント:
今回のインタビューを通じて、多様化するフォロワーや価値観にどう向き合うかという点で、新たな視点を多くいただき、SNSに関する学びの可能性がさらに広がったように感じました。
こうした気づきを、今後の取り組みにも活かしていけたらと考えています。
アディッシュでは、様々な業界の企業・団体向けにSNSリテラシー勉強会(研修サービス)を実施しています。SNSリスク対策の専門家として、お客様の課題に合わせた最適な研修内容をご提案します。
研修では、SNS発信における表現の多様性や他者への配慮について取り上げています。具体的には、ポリティカル・コレクトネスやアンコンシャス・バイアス、炎上の原因やその対策方法、危険から身を守るSNS利用法、言い換え表現、ステルスマーケティングの問題についても取り扱っています。
実際の研修内容はご相談の上で決定いたしますので、お気軽にお問い合わせください。
全体を通して、選手を守りサポートする川口様の真摯な姿勢と、達観した考え方に深く感銘を受けました。冷静で広い視野を持ち、的確に言葉を紡ぐ姿がとても印象的でした。
その背景には、川口様ご自身が元選手であることに加え、大学時代から5年間マネージャーを務め、SNS対応や広報も兼任してきたご経験があります。
批判や誹謗中傷がチームに届く場面も身近に見てきたからこそ、選手の心の負担に寄り添い、見えにくい心の負荷にも想像を巡らせながら、実践的なサポートへと自然につなげていることが伝わってきました。
また、大学時代にスポーツマネジメントを学んできたご経験もあるとのことで、そうした知識も現在のマネジメント視点やサポートの在り方に活かされていると感じました。
私たちも、川口様のように現場で選手に寄り添う方々とともに、安心してSNSを活用できる環境づくりの一端を担えたら嬉しいです。