企業のSNSリスク担当者が自社のSNSリスク対策として最初に考えるのは、SNS上のリスク投稿をどのように見つけにいくか、ということではないでしょうか。
SNSと一言で言っても、Twitter、Instagram、Facebook、YouTubeなど様々なメディアがありますし、掲示板サービスなども含めると一般ユーザーがインターネット上に自分の意見を表明する手段はとても多く存在しています。
また、投稿をチェックする方法についても、TwitterやInstagramなどで直接検索する方法もあれば、専用のソーシャルリスニングツールを活用して投稿を取得しチェックする方法、または有人監視サービスを活用して専門事業者にSNSの投稿チェックを委託する方法もあります。
これほどたくさん対象や手段があると、まずは手堅くソーシャルリスニングのツールを使って自社内で投稿をチェックしていく方法を考える企業が多いのではないでしょうか。
ツールによっては、あらゆるSNSから取得した多数の投稿を一箇所に集約して閲覧できたり、一定の件数を超えるとアラートメールを発報したりするものもあるなど、効率的にリスクを発見できる機能が揃えられています。1件1件の投稿をチェックするのはもちろん、日々の全体的な傾向を見たり、どのSNSに多くリスクが潜んでいるのかを把握したりするには、ツールという手段は大変便利でしょう。
ツールを利用してリスクのある投稿を探そうとすると、多くの企業でいくつかの壁にぶつかります。
まず、ツール導入直後にぶち当たる壁、それはツール設定です。
基本的に社名、商品名、サービス名、ブランド名をメインワードに設定しますが、商品やサービスがいくつもある場合はたちまち「設定できるキーワード数」の上限数に達してしまい、どのキーワードを設定してどれを削るべきかという課題が生じます。
さらに、無関係な投稿が多すぎて肝心のリスク投稿が埋もれてしまうこともあります。特に、設定しようとしているキーワードが一般的に利用されるものであったり、類似ワードが世の中に存在している場合などは、自社に関する内容のみを取得できるような「NOTワード」や、特定のリスクを注視するための「リスクワード」を組み合わせる必要があります。
また、ツールが高機能ゆえに、自社にとって必要以上に機能があり逆に使いこなせないという声もよく聞かれます。ソーシャルリスニングツールには、主にマーケティング目的で活用されているものがあり、そのようなツールでリスク投稿を見つけようとしてもうまくいかないことがあります。
キーワード設定が無事済んだとしても、さらなる壁が立ちふさがります。それは判断基準です。判断基準とは、そのリスクをどう評価するのかというリスクのレベルのことを指します。
例として、食品メーカーや飲食店のSNSリスクを見てみましょう。自社商品の異物混入に関する投稿がSNS上に出ていたら、それを「リスク」とするか、「(日常あることなので)非リスク」とするか、リスクとして扱う場合「画像がついている場合のみ対処」、「店舗名・工場名が特定される場合のみ対処」、「リツイートが一定以上の場合は対処」など様々な基準が考えられます。
リスクのある投稿が発見された際に落ち着いて対処するため、事前に想定されるリスクを洗い出し、それぞれで判断基準を揃えて担当者間で認識を合致させる必要があります。ツールを導入するだけではこの課題は解決されず、会社の方針としてどう動くのかを予めシミュレーションすることが望ましいです。
SNSリスクチェック業務が軌道に乗ってくると、次にやってくる壁は人的リソースの確保です。
担当者が他の業務と並行して行っている場合、SNSリスクの投稿チェックに定期的に時間が費やせないというケースもあるでしょう。また、夜中や土日など、業務時間外に温度感の高いリスク投稿が上がった場合、気付くのが遅れることもあります。SNSの投稿が最も頻繁になるのは、深夜23時頃~0時頃というケースが多く、多くの企業では業務時間外となります。
炎上傾向にすぐに気付けるようアラートを設定しても、反応頻度が高すぎてついつい確認を後回しにしてしまうというのもよくあるケースです。少ない人数で担当している場合は特に、こうしたリソース面での不安は常に懸念されるでしょう。
皆さんも同じような課題を持っていませんか?
■ソーシャルリスニングツール導入後に直面する7つの課題 <ツール設定の課題> <判断の課題> <人的リソースの課題> |
ソーシャルリスニングツールを利用してSNSリスク対策を運用する場合の課題を7つ挙げましたが、ここではツール活用での効果を上げる7つのポイントについても解説します。
まず、ツール設定については基本的に常に最新情報に保つということです。最低でも月1回は設定が問題ないかを見直す時間を設けると良いでしょう。
ソーシャルリスニングツールの多くは、アカウントがあればログインできるタイプのものが多く、退職者のアカウントがツールに残り続けていた場合には外部からもアクセスできてしまう恐れがあります。
また、設定キーワードの精査を定期的に行わなければ、無関係な投稿が増え続けてしまい、関係のある投稿が埋もれてしまうということも考えられます。キーワードの精査もできる限り高い頻度で行わなくてはなりません。
また、社内での報告をどうするかも、しっかり設計すべきでしょう。
社内報告は、何かあった際の有事だけでは不十分と考えます。日頃から、どのようなSNSリスクが存在してどの程度の投稿件数があるのかを、実務担当者だけでなく関係者も把握しておくことが望ましいです。そうすれば、いざというときの判断がしやすいでしょう。レポートを出力できる機能があるツールもありますので、毎日の報告や月次報告など、社内関係者に見てもらえるようなレポートを考えましょう。
有事対応に向けた事前準備も必要不可欠です。これは、実務担当者だけが考えれば良いものではなく、関係部署や広報担当なども含めたより広い範囲で考えていくべきものです。
炎上などのクライシスはそれほど頻繁に起こるものではなく、多数の企業では数年に1回あるかないかという頻度のため、日頃から備えるというのがなかなか難しいかもしれません。しかし、SNSでの炎上は突然訪れ、その拡散スピードの速さは凄まじいものです。SNS上の投稿動向に常時アンテナを張り続けつつ、いざというときの備えも整えておくことが必要不可欠と考えます。
店舗でのお客様とのトラブル、工場での事故、機密事項の情報漏洩…このような内容がSNSに投稿されていた場合、多くの企業ではそれぞれ担当部署が異なるのではないでしょうか。どのような内容のリスクがあった際にどの部署・どの担当者に報告するのかを予め準備しておきましょう。
■ソーシャルリスニングツールの効果を上げるための7つのポイント <ツール設定> <社内での報告> <有事対応に向けた事前準備> |
実際にツールを活用して投稿をチェックすると、リスクを伴う炎上はほとんど発生しないものの拡散しない程度のネガティブ投稿はそれなりに存在することに気付くのではないでしょうか。
この1件1件をどう判断していくかは企業ごとに判断基準が異なるものですが、「炎上していなければ安心」と直ちに言い切れないのは、どの企業でも共通していることです。その時拡散しなくても、後から大炎上へと発展することは過去に何度も見受けられました。1件だからスルーして良いということは決してありません。
ネガティブな投稿を発見したら、投稿者のプロフィールを見てどの程度の影響力があるアカウントかを確認したり、その投稿者の過去の投稿から他のトラブルがないかをチェックしたり、同調している人がどの程度いるかを見極めたり、そしてそのトラブルの事実関係を確認したりするなど、対応が必要なケースもあります。たとえ1件でも気になる投稿があれば、調査するのかどうか、するとしたらどこまで調査するのか、判断が求められます。
ただし、ネガティブな投稿が何件もある場合には、1件1件を調べると膨大な時間がかかるので、費用対効果を考えてある程度の線引きが必要です。例えば「アプリにつながらない」という投稿があった場合、1件ならばユーザーの端末の問題も考えられますが、同じ時間帯に複数の類似投稿があったら何らかの不具合も想定されるので「その時間帯に同様の内容○件以上あったら調査」という線を引くのも良いでしょう。
炎上してからクライシス対応を開始するのではもう手遅れです。有事の際に即動けるよう、日頃から自社についてどのような内容が語られているのかを把握し、有事の際の準備をしておかなければなりません。
一方、いつ起こるか分からないクライシスを常時念頭に置いて体制を組むのは、SNSリスクに関する専門部署がある場合は別ですが、兼務の場合は容易なことではありません。
中でも、毎日一定の時間を割かなくてはならないSNSチェック部分は、常にリスクに気付ける状態を作っておくことが必要となります。ツールを導入していたとしても、それをチェックするには人手が必要です。自社のみで推進するにはリソース不足という場合、一度「専門業者に委託する」という方法を模索してみてはいかがでしょうか。
アディッシュでは、目検による有人監視を24時間365日行っています。土日や祝日はもちろん、深夜帯や年末年始でもSNS上の投稿確認を請け負っています。単にテキストを読むだけでなく、何に関するリスクかを1件1件判定して日報や月報などのレポーティングも行っています。アラートに関しては、ポジティブな内容で盛り上がっているときは連絡せずあくまでもネガティブな内容が拡散しているときのみに関係者に連絡するなど、無駄な連絡が入らないようになります。お客様のツールを利用しての監視も可能です。もちろん、ツールがない状態での監視も対応しています。
ソーシャルリスニングツールで行き詰まっている担当者様は、一度有人監視サービスも検討してはいかがでしょうか。