UGC(User Generated Content=ユーザー生成コンテンツ)はマーケティングにおいて重要視され、多くの企業が活用してきました。今回はUGCの基本から今後の展望、そして無視できないリスクとその対策をまとめていきます。
UGC(User Generated Content=ユーザー生成コンテンツ)とは、企業ではなく一般ユーザーによって作成・発信されるコンテンツのことです。写真や動画などSNSに投稿されるコンテンツの他、口コミやレビューなどもUGCに該当します。
このUGCによって形成されているメディアのことをCGM(Consumer Generated Media=消費者生成メディア)と呼びます。飲食店の口コミ情報サイトやレシピサイト、ユーザー同士で問題解決をするためのQ&AサイトなどはこのCGMの代表例です。
また、UGCと類似するワードとして「IGC」というものがあります。これはインフルエンサー生成コンテンツ(=Influencer Generated Content)のことです。一般ユーザーではなく、インフルエンサーに自社の製品やサービスを紹介するよう依頼して作成されたコンテンツを指します。
それではこれほどまでにUGCが注目される理由は何でしょうか。
人々はSNSを通じて膨大な量の情報を目にしています。コロナ禍における外出自粛の影響もあり、SNSからの情報収集はさらに習慣化しました。そして、情報収集において消費者が信頼するのは企業の広告ではなく、他のユーザーの発信内容だという報告もあります。
企業もSNSにおいて公式アカウント運用や広告の配信を通じて自社の製品やサービスの魅力を届けています。これらは企業のファンには響きやすい内容です。一方でまだ企業や製品、サービスについての情報が到達していない潜在的な顧客に対してはUGCを通じて興味を持ってもらうことが有効と考えられます。
それでは具体的なUGCの活用方法としてどのようなものがあるのでしょうか。
前述の通り、マーケティングにおいてUGCは非常に有効と言われています。これは潜在的な消費者にとって身近な存在である一般ユーザーのリアルな意見こそが信頼や共感を生みやすいためです。
例えば、今度家族で行くためのレストランを探していたとします。
お店のWebサイトやSNSに掲載される店内写真や料理写真はプロのカメラマンが撮影するケースが多いのではないでしょうか。これらの写真はとても魅力的ですが、実際よりも良く見せているのでは?という疑念が生じます。
一方で一般ユーザーによるクチコミの場合、クオリティとしては当然プロには及びません。しかし実際に体験したリアルな写真や情報が掲載されます。本当に知りたいのはこちらのリアルな情報ではないでしょうか。
その他、食品であれば食べてみての感想やアレンジレシピなどは人々が求めている情報です。また、ファッションであれば着用した感想やその他のアイテムとの組み合わせ方などのUGCを活用することでマーケティング効果を生みます。
具体的な活用方法として、UGCを自社のWebサイトやSNSに掲載するケースがよく見られます。そして、UGC活用のためにはたくさんのユーザーによるコンテンツを集めなければなりません。
例えば自社の製品の利用シーンを撮影した写真を投稿するキャンペーンが考えられます。他には独自のハッシュタグからUGCを収集するというアイデアもあるでしょう。
また全ての商材がUGCに向いているとは言えないこともあり、実際の導入には様々な工夫が求められます。
一般ユーザーによる生成コンテンツであるUGCにおいては、以下の観点でリスクが考えられます。
基本のルールとしてUGCの利用のためにはユーザーから許可を得る必要があります。無断で自社の広告などに利用することはNGです。
キャンペーンなどで収集する際にはUGCの利用方法について説明した上で同意してもらう必要があります。またSNSにおいてはユーザーとDMなどで許可を取りましょう。
ちなみに各SNSは「埋め込み機能」というものを提供しています。これを利用すれば個別のユーザー投稿を簡単に自社サイトに掲載することができます。しかし、Instagramは「埋め込み機能は画像の利用許可をするものではない」という公式声明を発表しており、ユーザーから直接許諾を得ることが推奨されます。
自社サイトに掲載するなどUGCをマーケティング活用した時点で、その企業からの発信情報となります。そのため薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)などの広告表現規制の対象になります。
そもそもユーザーによるコンテンツのコントロールは困難です。そのため不正確な情報や低品質な内容などはブランドイメージにとってマイナスとなりかねません。
UGCの中身を十分にチェックすることでリスクを低減させる必要があります。
その他にもステマ(ステルスマーケティング)とならないように注意が必要です。第三者による自主的なコンテンツであれば問題がありません。しかし企業がユーザーにコンテンツ作成を依頼した場合にはステマにならないよう関係性を明示しなくてはなりません。
現時点でUGCとしてイメージするのはSNSにおける投稿(画像や動画を含む)や口コミレビューかと思います。しかし、今後は様々な場所で高いクオリティのUGCが生み出されるようになります。
例えば「メタバース」においては一般ユーザーがアイテム(ファッションや家具など)やワールドと呼ばれる世界そのものを作成しています。まだ作成に専門的な知識や技術を要するため、全てのユーザーが気軽に参加できるものではありません。しかし、今後は生成AIなどが補助することで、複雑で高クオリティのUGCを一般ユーザーが作成可能になると言われています。
このような高クオリティのUGCはメタバースなどのプラットフォームで販売されたり、NFTとして資産化しています。ビジネスとして成長する一方で「UGCが他者の権利を侵害していないか?」という点に注意が必要です。
メタバースなどデジタル空間上での権利保護についても動き出しています。これまで現実空間においてのみとされてきた模倣品の規制がデジタル空間にも及ぶことになります。
多様化するUGCの変化をキャッチしていくことが求められます。
インターネットの普及によって特別な知識や技術がなくても一般ユーザーにできることは増加してきました。そして人々が求めるUGCという形で一般ユーザーの影響力は拡大しています。
このUGCを企業がマーケティングに活用することは大きな効果が期待できます。ただし、ルールを遵守しなければ企業やそのブランドにとって深刻なダメージとなりかねません。
またUGCの形態は日々変化しており、リスクのあり方も流動的です。
インターネットユーザーによる表現がどのような形式で、どのような場所にあるのかを常にキャッチアップすることが求められます。