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住所でポン事件とは?違法性はあったのか?

作成者: MKG|2022.03.07

かつて「住所でポン!」で情報が漏洩している点が指摘され、裁判で争うところまで至った、住所でポン事件と呼ばれる事件があります。
その際に、プライバシー侵害の違法性などについて問われました。 裁判の中で、プライバシー侵害についてどのような判決が下されたのか気になるところです。
そこで今回は、住所でポン事件やプライバシー侵害の違法性などが知りたい方に向けて、住所でポン事件の概要や判決について解説していきます。

住所でポン!とは?

住所でポン!はネットに保管されている「電話帳」にあたるもので、元々ハローページに掲載されていた個人情報(氏名や住所、電話番号など)がこのホームページにまとめられています。
各地域ごとに分けてデータが掲載されており、電話番号・名前などで検索をかけると調べられます。

このホームページの運営者は示現舎合同会社代表の鳥取ループ氏で、彼は2019年頃に「アンチ個人情報保護法」というブログを書いていました。
そこのお問合わせフォームには「住所や氏名、電話番号の削除依頼は断固拒否する」というスタンスの文言が書かれていました。

そのスタンスがこの事件の1つの原因となっているのです。

住所でポン事件の概要

住所でポン事件は、以下のような争点を巡って裁判が行われました。。

  1. 住所でポン!のホームページに掲載された情報は、プライバシー保護対象に値するのか
  2. 原告が公的な仕事に就いていない場合、プライバシー情報の公開は違法なのか

この流れの概要について解説していきます。

1.住所でポン!のホームページに掲載された情報は、プライバシー保護に値するのか

住所デポンに掲載された情報は、上述したように元々ハローページに掲載されていたものです。管理人側としては、既に掲載・公開されていた情報をページへまとめただけなので、プライバシー保護されるものではなく、さらにこの掲載により原告が実際に被害を受けたわけでもないはずだ、などの主張をしました。

さらに被告は住所でポン!に掲載していた氏名や住所などの情報は、依頼を受けても削除しない、と強気なスタンスを取っていましたが、原告側はそれに対して疑問と不満を感じ、裁判となったのが大まかな流れです。

そして裁判では、原告は被告に対して違法行為による損害賠償およびそれら公開情報の削除を求めました

まずここでポイントになってくるのは元々紙媒体で公開されていた個人の情報(住所、電話番号、本名など)がプライバシー保護対象になるのか…?ということです。

よって、実際に損害賠償を支払うか、掲載情報を削除するかについて触れる前に、プライバシー保護の是非を議論する形となりました。

2.原告が公的な仕事に就いていない場合、プライバシー情報の公開は違法なのか

次にもし住所や氏名、電話番号がプライバシー情報として保護される対象である…と認められた場合、これらの情報公開によって、原告側のプライバシー侵害に値するかどうかが注目されました。

ここで被告は、個人情報保護法に基づいて「原告は公的な仕事に就いておらず、一般人であるため、個人の権利・利益 を害するおそれがない。」と主張しました。これは、個人情報保護法第2条に記載のある文章から意見を述べているのですが、簡単に言うとそもそも権利や利益を侵害する可能性が少ない場合は個人情報保護の対象にならないはずだ…という意見です。

この考えを踏まえて、公職についていない私人の情報を掲載する行為が違法行為として扱われるかどうかについても問われました。

住所でポン事件の判決

住所でポンで問われた内容について、どのような考えをもって裁判所が判決を下したのか詳しく解説していきます。

プライバシー情報について

まずは原告の住所や氏名、電話番号がプライバシー情報にあたるかどうか判決が下されました。
結論から言うと、それらの情報はプライバシー保護に値すると判断

氏名は他人と差別化するために必要で、個人を特定できるものです。
氏名と個人のその他の情報をリンクさせることで、その情報と個人の関連性を持たせる機能を果たします。
氏名とリンクされる住所や電話番号などは、個人の生活に必要な情報で、個人の私生活を表す情報であると言えるのです。

これらの要素を根拠に、原告の氏名はもちろん、それに結びつく住所や電話番号はプライバシー情報にあたり、決して公開されてよい情報ではないとされました。

違法行為として扱われるかどうか

原告の私的な情報がプライバシー情報に値すると判決されましたが、それでも被告側が納得する様子はありませんでした。
実際、その判決だと住所でポン!だけが違法行為になるだけでなく、紙の電話帳も違法行為として扱われてもおかしくありません。
そのため「住所でポン!」と「紙の電話帳」との違いを明確にすることが必要でした。

そこで原告は、ハローページではあくまでも地域限定で公開されており、インターネットのような広域で公開されるのもではないことも主張しました。これは原告が「インターネット掲載への許可はしていない」という強い訴えとなっています。

紙媒体では情報の公開範囲が地域ごとに絞られているのに対して、住所でポン!は不特定多数の人の目に触れてしまい、さらに拡散の恐れのあるインターネット上に公開されています。
こうしたことから、情報公開の持つ意味合いが変わってきます。

個人の情報を電話帳に掲載することを認めているとはいえ、住所でポン!でも私的情報を載せることを認めているとは限りません。
そうなると、住所でポン!でプライバシー情報を載せることを認めていない限りは、不当に情報がまとめられているとして、違法行為にあたると言えます。

裁判の結果、被告は原告の人格権を損害していると認められました。
その後、被告が上告をしていましたが受理されることはなかったのです。
裁判が始まってから約3年後の2018年に、被告に55,000円の損害賠償命令が確定しましたが、被告は損害賠償を支払う姿勢を見せていません。

この事件が起きてからアンチ個人情報の内容を論じていることから、この判決に対して被告がどう考えているのかは言うまでもないでしょう。

そして住所でポン!で情報の削除が行えないスタンスは今も変わりません。
しかし、裁判に持ち込む、あるいは弁護士を頼って法的に削除してもらえる可能性はあるので、気になる方は試してみてください。

まとめ

住所でポン事件で、プライバシー情報として扱われるのは、公開されて何かしらの影響力があるかによることが明らかになりました。
そして、プライバシー情報は氏名だけでなく、個人を特定する情報もすべて結びついてくることもわかったのです。

個人情報の扱いは年々少しずつ形を変えてきており、私的な情報に値するか慎重な判断が求められる機会も増えると予想されます。
今回の判例を基に、今一度プライバシー情報について考え、いざというときに不利な立場になってしまわないように意識しておきましょう。