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KYC(本人確認)で不正行為・なりすましを防止!効果的な費用対効果と運用設計の完全ガイド

はじめに|KYC導入で不正対策を強化する必要性

現在、オンラインサービス上での不正利用やアカウントなりすましが深刻化しています。他人名義で携帯電話を契約したり、銀行口座を開設されたり、決済サービスで高額商品が不正に購入されるなど、さまざまな事例が報告されています。このような被害を防ぐために、サービス運営者に求められるのがKYC(Know Your Customer:本人確認)の強化です。KYCを適切に導入することで、ユーザー登録時に本人確認を行い、悪意のある第三者による不正登録や詐欺行為を未然に防止することができます。

本記事では、KYC導入が必要とされる背景や典型的な不正事例を紹介し、OCR方式とビデオ方式の導入方法の比較や、実際の運用における体制構築やツール選定のポイントについて解説します。さらに、申請から審査に至る業務フロー設計のコツや、導入後の効果測定改善策について、現場の視点を交えた実践的な情報をお伝えします。

1. 本人確認が必要な背景と不正事例

オンラインサービスにおける不正利用やなりすまし被害が増加しており、サービス提供者にとってこれらのリスクは深刻な問題です。eKYC(オンライン本人確認)は、銀行・証券口座開設をはじめ、キャッシュレス決済、通信契約、ECサイト、マッチングアプリなど、多くの分野で活用されています。このような広範囲での利用が進んでいる背景には、不正利用の防止とサービス信頼性の確保が求められていることがあります。

インターネット上では、他人名義での不正登録やなりすまし行為が後を絶たず、企業にとって顧客の実在性を確認することは、リスク管理において欠かせない要素となっています。具体的には、高額商品のレンタル後に持ち逃げされる、盗まれた情報で決済アカウントを開設し預金を不正に引き出すといった犯罪が報告されています。これらの被害は、金融機関に限らず、フリマサービス、オークション、マッチングサービス、オンライン決済など、さまざまな分野で発生しています。

また、法規制の面では、金融機関や暗号資産交換業者など、資産を取り扱う業種においては、犯罪収益移転防止法に基づく厳格な本人確認手続きが義務付けられています。しかし、法律で義務化されていない業種においても、ユーザーの信頼性向上や不正防止を目的に、任意でKYCを導入する企業が増加しています。例えば、マッチングアプリでは年齢確認や本人確認を通じて信頼性を向上させ、シェアリングサービスでは不正行為防止のために本人確認を活用しています。

このように、サービス提供者がユーザーの「本人であること」を確認する仕組みは、詐欺被害の防止やプライバシー保護、サービスの健全化のためには今や不可欠です。適切なKYC導入によって、不正ユーザーの排除やコミュニティの信頼維持、金銭的被害の防止、そして法令遵守による事業の安定運営が実現できます。

※eKYCとは?

eKYC(電子的本人確認)は、インターネットを介して本人確認を行う方法です。顔認証やOCR技術を活用することで、ユーザーはオンラインで本人確認をスムーズに行え、サービス提供者は不正リスクを減らすことができます。

eKYCは、特にオンラインサービスやSaaS業界において重要な手段となり、顧客の信頼性を確保し、不正行為を防ぐために不可欠なテクノロジーです。KYCの導入には、運用体制の整備とツール選定が不可欠です。自社の特性に合ったツールを選ぶことで、不正行為の防止と顧客信頼の向上が実現できます。最適なKYCツールを導入し、効率的な運用を行うことで、長期的な高いROIを確保できます。

2. KYC導入時の方式比較(OCR・ビデオ)

KYC(本人確認)を導入する際、オンラインでの本人確認方式は複数存在します。代表的な方法として、ユーザーに証明書類画像とセルフィー(顔写真)を提出してもらう「OCR方式(画像アップロード)」と、オペレーターとのライブビデオ通話で本人確認を行う「ビデオ方式」があります。それぞれの特徴、メリット・デメリットについて比較してみましょう。

OCR方式(静止画アップロード)

OCR(光学文字認識)方式では、スマホやPCを使用して、ユーザーが本人確認書類(表面・裏面)と自身の顔写真を撮影・アップロードします。OCR技術や顔認証AIを活用して、書類情報の抽出や顔写真の照合を自動化することができます。そのため、手続きはスピーディーに進み、ユーザーにとってもオンラインで完結するため手間が少なく、申し込み離脱を防ぐ効果があります。

ただし、完全にシステムに依存することには限界があり、偽造身分証を100%見抜くことは難しいのが現実です。そのため、多くのサービスではOCRによる自動判定に加え、オペレーターによる目視チェックを組み合わせて、不正行為を検出する体制を取っています。OCR方式は、比較的低コストで、スケーラブルな運用が可能ですが、不鮮明な画像や情報不一致による再提出(不備)の発生率を抑えるため、一定の工夫が必要です。

ビデオ方式(ライブ本人確認)

ビデオ方式では、ユーザーと認証担当者がリアルタイムのビデオ通話または録画を通じて、本人確認を行います。コールセンターのオペレーターがユーザーに身分証を提示させ、その内容を確認し、さらに質問を通じて本人性をチェックします。対面のような厳格な確認ができ、不審な挙動や書類の細部までその場で確認できる点が強みです。

ただし、スタッフ対応が必要なため、リソースや時間がかかるのがデメリットです。特に、ユーザー数が多い場合、高ボリュームの顧客対応には非効率になることがあります。さらに、ユーザー側もビデオ通話の時間調整や安定した通信環境が必要であり、手軽さではOCR方式に劣ります。また、ビデオ方式は人件費がかさむため、コスト面で高くなります。しかし、金融機関など高リスク取引を扱う業種では、より厳密な本人確認が求められるため、ビデオKYCが採用されるケースもあります。

OCR方式とビデオ方式は、迅速でユーザーフレンドリーなOCR方式と、対面に近い信頼性を担保できるビデオ方式という、異なる強みを持っています。そのため、サービスのセキュリティレベルやユーザー規模に応じて、どの方式を選ぶかを慎重に検討することが重要です。

最近では、OCR方式でもライブネスチェック(まばたきや顔の向き変更を確認することで本人の実在を確認する手法)や、身分証の厚み確認といったビデオ方式の利点を取り入れたハイブリッド型の仕組みが登場しています。このように、両方式の利点を組み合わせることで、より高い信頼性と効率を実現することが可能です。

3.導入体制とツール選定のコツ

KYCを導入する際には、運用体制と最適なツール選定が成功のカギとなります。
特に、KYCを実施することで、詐欺防止や不正利用のリスクを軽減し、法令遵守を実現できるため、戦略的な投資と考えられるケースが多いです。以下では、特に重要な選定ポイントを紹介し、それぞれを選定する理由や背景を説明します。

1. 対応方式とチャネル|KYCの方式選定で迷わないために

KYCには主に、スマホアプリ型とWebブラウザ型の2つの方式があります。

  • スマホアプリ型:モバイルデバイスを活用した、オンライン完結型の本人確認。ユーザーにとっては手軽で、オンラインサービスに最適です。

  • Webブラウザ型:PCを使った環境で、より業務に向いており、安定した接続で利用できます。

どちらを選ぶかは、ターゲットユーザーの特性やサービスの性質によって異なります。
例えば、オンラインサービスやモバイルアプリを提供する企業には、スマホアプリ型が適している一方で、企業向けサービスではWebブラウザ型が向いています。

2. 費用体系|KYCツールのコスト対効果を見極める

KYCツールの費用体系は、初期費用や月額料金、従量課金などさまざまです。企業は、ツールの選定において費用対効果をしっかりと比較し、最適なツールを選ぶ必要があります。

費用対効果を見極める

KYC導入により、不正リスクの削減や顧客満足度の向上が期待できます。そのため、KYCは単なるコストではなく、長期的に見れば高いROI(投資対効果)を得るための手段とも言えます。

費用体系の種類

・初期導入費用:ツールを導入する際の初期費用を考慮。
・月額基本料:毎月発生する固定費用。
・従量課金:利用ボリュームに応じて課金される費用。

これらの費用体系を比較し、どのプランが自社の規模やサービスに最も適しているかを判断することが、費用対効果を最大化するために不可欠です。
例:企業規模に応じたKYCツールのプラン選び

  1. スタートアップ企業(規模が小さい、初期投資を抑えたい)
    ・推奨プラン:従量課金制
    ・理由:
    スタートアップの場合、ユーザー数が少なく、初期費用や月額料金を抑えつつ、利用ボリュームに応じて費用が発生する従量課金制が適するケースが多いです。これにより、急成長時にはスケーラブルに対応でき、コストも実際の使用量に基づくため、無駄な支出を避けることができます。
  2. 中規模企業(安定したユーザー数、予算に余裕あり)
    ・推奨プラン:月額基本料プラス従量課金
    ・理由:
    ユーザー数が増えてくると、月額基本料の固定費用を支払って、安定的にサービスを利用するメリットが出てきます。月額料金に従量課金が追加されるプランであれば、ボリュームに応じて対応でき、予測可能なコストで運用できます。
  3. 大企業(多くの顧客を持ち、高度なセキュリティやカスタマイズを求める)
    ・推奨プラン:初期費用+月額基本料+カスタマイズ費用
    ・理由:
    大企業では、最初に初期費用を支払って専用のKYCシステムをカスタマイズしたり、セキュリティ機能を強化したりすることが求められる場合が多いです。月額料金で安定したサービスを受け、ビジネスニーズに合わせたカスタマイズやサポートを得るための追加費用が必要になることが一般的です。

具体的な選択肢例

  • 小規模なECサイト: ユーザー数が少ないため、従量課金制のプランが良いでしょう。利用する範囲で費用を抑えつつ、成長に応じたスケーラブルな運用が可能です。
  • モバイルアプリ提供企業: 月額基本料が設定されたプランに従量課金を加えた形式のプランを選ぶことで、ユーザー増加に伴って必要なリソースに応じた料金プランを選べます。
  • 金融機関: 高度なセキュリティやAPI連携が必要な場合、初期導入費用+月額基本料+従量課金のプランが最適です。追加のカスタマイズやサポートも考慮に入れ、スムーズな運用が可能です。

このように、企業の規模やニーズに応じたプラン選びが、KYCツールのコスト対効果を最大化するために非常に重要です。

3. カスタマイズ性・連携|自社のニーズに合わせた柔軟なツール選定

KYCツールを選定する際には、自社システムとの連携や、カスタマイズ性が重要な要素となります。将来的な拡張性や機能追加に対応できるツールを選ぶことで、長期的な運用をサポートできます。

連携と柔軟性

選定するツールが、自社のシステムとAPIで連携できるか、またはカスタムルール設定が可能かを確認しましょう。これにより、サービスの変更や拡張が求められた際に、柔軟に対応できる体制を築くことができます。

4. セキュリティ対策|KYCツールのセキュリティ水準の確認が不可欠

KYCツールを導入する際、セキュリティは最も重要な要素です。個人情報を扱うため、データの暗号化や保存期間の管理、AI判定の精度を慎重にチェックすることが必要です。

データ保護とプライバシー

KYCでは、ユーザーの顔写真や証明書類などの敏感なデータを扱います。これらのデータが不正アクセスや漏洩から守られているかを確認することが、ツール選定時に求められます。信頼できる認証基盤を持つツールを選ぶことが、ユーザーの信頼を得るための第一歩です。

5. ユーザーの使いやすさ|KYCツールのUX/UI設計を重視

ユーザーがスムーズに本人確認を完了できるよう、UI/UX設計が重要です。使い勝手が良ければ、不備による再提出率が減少し、ユーザー満足度の向上につながります。

エラー誘発の最小化

操作説明を分かりやすく、エラーが発生しにくい設計にすることで、ユーザーの負担を軽減できます。さらに、離脱率を減らすためには、事前にデモ画面やフィードバックを通じて、ユーザーにとっての使いやすさを確認しておくことが重要です。

4.KYCは「高い費用対効果を持つ良い投資」

昨今、KYCは「高い費用対効果を持つ良い投資」と見なされています。KYCを導入することで、不正行為の防止や顧客の信頼感向上、法令遵守が実現し、企業にとっての長期的な利益を確保することができます。

たとえば、KYCにより不正利用のリスクが減少し、企業の損失を抑えるとともに、顧客満足度の向上やブランドの信頼性強化が図れます。さらに、法令遵守を通じて、法的リスクを回避し、運営の安定化に寄与します。

このように、KYCの導入は単なる「コスト」ではなく、戦略的な投資として、サービス提供者に多くの利益をもたらします。KYCの適切な実施によって、セキュリティ強化とオペレーション効率の向上を両立させることが可能になり、最終的には企業全体の成長にも寄与することができます。

5.申請~審査までの業務フロー設計

KYC導入における具体的な業務フローは、ユーザーが本人確認を申請してから運営側で審査を完了するまでの一連の流れを指します。ここでは、不備率(書類不備や申請ミスの発生率)を低下させつつ、効率的かつ確実に本人確認を行うためのフロー設計ポイントを見ていきます。

ユーザー申請ステップの設計

ユーザーがスムーズに必要情報を提出できるよう、入力フォームや撮影画面の設計を工夫します。例えば、氏名・住所などの基本情報は事前入力させ、身分証の種類選択に応じて提出すべき書類画像を案内することで、UXを最適化します。

また、撮影時の注意点(例:「明るい場所でブレなく撮影」「書類全体が写るように」)をわかりやすく提示することにより、一度で承認される率を高めることが重要です。実際に本人確認書類提出時に多く見られる不備には、写真のピンぼけや書類と登録情報の不一致があり、事前チェックリストを設けることでユーザー自身がミスに気づける仕組みを作るのが有効です。

リアルタイムチェックとユーザー体験

提出時にOCRで文字情報を読み取り、その場で入力内容との一致を確認するなど、リアルタイムの自動チェックを取り入れると不備発生を減らすことができます。また、ユーザーがライブネス検証(まばたきや顔の向き変更)や身分証の傾き撮影(厚み確認)を行うフローを組み込むことで、書類偽造やなりすましの検出精度が高まります。

これらの追加ステップは多少手間ですが、セキュリティ向上と引き換えにユーザー離脱が増えないよう、以下のような操作ガイダンスの工夫が重要です。

  1. リアルタイムフィードバックの提供
    ユーザーが提出した情報や画像に対して、その場でリアルタイムにフィードバックを提供します。例えば、画像が不鮮明だった場合は、「画像がぼやけています。もう一度、明るい場所で撮影してください」といった具体的な指示を表示することで、ユーザーは何を修正すべきか一目で理解できます。このリアルタイムチェックにより、再提出を防ぎ、ユーザーの負担を減らすことができます。

  2. 行状況の可視化
    本人確認のプロセスを、進行状況を可視化することで、ユーザーが次に何をすべきかを把握しやすくなります。ステップごとのガイドラインやプログレスバーを表示し、現在の進行状況を明確にすることで、ユーザーは自身の位置を確認でき、完了までの道筋が見えやすくなります。

  3. 簡単で分かりやすいガイドラインの提示
    撮影時や入力時に、シンプルでわかりやすい指示を表示します。例えば、顔写真を撮影する際に「顔をカメラに正面に向け、背景が暗くない場所で撮影してください」といった、具体的で直感的に理解できる指示を提供します。このように事前に分かりやすいアドバイスを与えることで、誤った入力や撮影ミスを減らすことができます。

  4. 行中の質問・サポート窓口を設置
    ユーザーが途中で不明点や疑問を持った場合にすぐに対応できるよう、リアルタイムで質問できるサポート窓口(チャットボットやサポートセンター)を提供します。例えば、「証明書のアップロード方法が分からない」という場合に、ガイドを表示したり、直接サポートに連絡できるオプションを用意しておくことで、ユーザーが途中で困ることなく進行できます。

  5. 心理的負担を軽減するメッセージ
    し不備があった場合でも、ユーザーがストレスを感じないような言い回しを使用します。「画像がぼやけています」という表現ではなく、「少しピンぼけしています。もう一度確認していただけますか?」というように、やわらかい表現を使うことで、ユーザーが再提出に対して前向きに感じやすくなります。

審査プロセスと分業

提出されたデータはまず自動審査を行い、機械が読み取れなかった項目や疑わしい点のみ人間による確認が行われるハイブリッド運用が効率的です。一定のスコア以上で自動承認、それ以下は二次審査に回すなどのルールを設けることで、業務効率と精度のバランスを取ります。

例えば、不正の兆候(本人写真と書類写真の不一致や高リスク国発行ID)が検知された場合のエスカレーションルールを予め定めておきます。また、審査結果(承認/否認)をユーザーへ迅速に通知し、否認時には具体的な不備理由と再申請方法を案内することで、ユーザーが再申請しやすい環境を作ります。審査チーム内では、不備内容のカテゴリ分析を行い、頻発する不備についてはフロー上で事前に潰せる改善策を検討します。

ログ管理と監査対応

KYCの各手続きはログを詳細に記録し、安全に保管する体制が必要です。承認・否認の判断理由や確認者の記録、提出書類の画像データ保存期間など、後追い検証や当局監査に備えた運用設計が求められます。特に金融分野では記録保存義務があり、システム上で検索・閲覧しやすい形でログを蓄積することで、運用負荷を軽減できます。

フロー改善と不備率の低下事例

適切に設計されたフローにより、ユーザーに過度な負担をかけず、高リスクの不正だけを確実に炙り出すことが可能です。以下は、フロー改善とその結果としての不備率の低下に関する具体的な事例です。

事例: 本人確認アプリ画面のガイダンス改善
ある企業では、本人確認アプリの撮影画面のガイダンスを改善することで、再提出率(不備率)が大幅に低下しました。改善内容は以下の通りです:

  • 視覚的ガイドラインの追加: 「顔写真を中央に配置」「書類全体をフレーム内に収める」「明るい場所で撮影」など、ユーザーが実際に何を修正すべきかを視覚的にわかりやすく表示。
  • インタラクティブなアドバイス: ユーザーが撮影中に不備を発見した場合、「画像が不鮮明です。明るい場所で再撮影してください」など、リアルタイムでフィードバックを提供。
  • 具体的なエラー指摘: 「書類の裏面が撮影されていません」や「顔写真が一部切れているため、再撮影をお願いします」など、ユーザーがすぐに修正できるように明確な指示を表示。

これにより、ユーザーはミスを減らし、一度で承認される率が向上。再提出率は30%以上低下し、よりスムーズに本人確認を完了できるようになりました。PDCAを回し、常にフローの改善を行う姿勢が重要です。このような改善を重ねることで、業務効率の向上とユーザー満足度の向上が実現します。

6.運用後の効果測定と改善策

KYCを導入した後は、その費用対効果を測定しつつ継続的に運用を改善していくことが重要です。効果測定の指標としては、例えば以下のようなものが考えられます。

1. 不正抑止の成果

KYC導入前後で、不正登録の未然防止件数や被害額の減少を追跡します。例えば、「導入後○ヶ月で他人名義の不正アカウント作成がゼロになった」や、「本人確認済みユーザーからの詐欺被害報告が皆無になった」などの成果を、定量的および定性的に評価します。また、万一不正が発生した場合は、ログを分析して手口を把握し、フローのどこを強化すべきかフィードバックを行います。

2. 利用者の動向

本人確認手続きに要する時間(申請から承認までのリードタイム)や、途中での離脱率をモニタリングします。仮に離脱率が高ければ、UI改善やサポート体制の強化が必要です。

前述のように、「オンライン完結の本人確認」によってユーザーの利便性は向上し、申し込み離脱の抑制にも寄与しますが、実際に自社でどの程度効果が出ているかを計測し、改善点を抽出することが重要です。また、ユーザーアンケートを通じて、手続きの満足度や不安点を収集するのも有効です。

3. 業務効率とコスト

審査にかかる人件費や時間を定期的に確認します。自動化率が上がり、審査工数が削減できているか、また不備対応や再確認に追われていないかをチェックします。費用面では、KYCツールの月額費用や外部委託費用と、不正防止による損失削減効果を比較し、ROI(投資対効果)が見合っているか検証します。多くの企業はKYCコストを「将来の損失を防ぐための必要投資」と捉え、前向きに評価しています。

4. 継続的な改善策

こうした指標をKPIやKGIとして定め、定期的にレビューすることで、KYC運用の現状把握と課題抽出ができます。その上で行うべき改善策としては、例えばAI技術のアップデートがあります。最新のOCRエンジンや顔認証アルゴリズムへの切り替えで精度向上や偽造検知力アップが期待できます。

また、ユーザーから寄せられた質問・苦情を分析し、手続きフローのボトルネックを洗い出し、画面表示の改善やヘルプコンテンツの拡充につなげます。さらに、外部環境の変化(例:新しい本人確認手段の法整備や、生成AIによる精巧な偽造ID出現など)にもアンテナを張り、それに対応できるソリューションを検討します。

最近では、ICチップ搭載の公的身分証情報や生体認証(FIDO)の活用などもトレンドとなっており、安全性とユーザビリティをさらに高める次世代のKYC手法として注目されています。

まとめ|KYC導入で築く安全なサービス運営と信頼性向上の第一歩

本記事では、KYC(本人確認)導入の重要性、具体的なフロー設計、そして運用後の効果測定と改善策について解説しました。KYCは単なる法的義務やセキュリティ強化だけでなく、不正防止や顧客満足度向上を通じて、企業にとっての戦略的な投資となります。

導入に際しては、社内体制の整備や最適なツール選定が重要です。特に、リアルタイムチェックや分業による効率化が、運用の成功には不可欠です。また、KYC導入後の効果測定では、不正抑止の成果や業務効率、コスト面での効果を定期的に評価し、改善策を講じることが、より良いサービス運営に繋がります。

加えて、KYC導入はユーザーの信頼性向上や法令遵守を確保するために欠かせないステップです。最新技術を活用したハイブリッド方式やAI技術のアップデートなどを取り入れることで、さらに効果的に運用を進めることが可能です。KYCの導入と運用は、企業にとって短期的な投資以上の価値を生み出し、長期的なブランド価値の向上に寄与します。

アディッシュは、10年以上にわたりオンライン上でのモニタリングを通じて、企業のセキュリティとブランド価値を守る支援を行ってきました。本人確認(KYC)業務においても、効率的な運用と確実な審査体制の構築を支援し、実行まで一貫して伴走します。

・「どこで、どのようにKYCを実施すべきか分からない」
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