スマートフォンと同時に普及し、多くの人が利用しているSNS。どんどん機能が豊富になっていますが、企業のSNS利用の実態もこの数年で大きく変容しました。いまやSNSアカウントを持っているだけでなく、商材や企業規模によっては複数のアカウントを使い分けている企業も珍しくありません。 今回は複数のSNSアカウントをもつ企業の例を参考に、運用上意識すべきリスク対策について考えてみたいと思います。
あなたは普段からSNSを使っていますか?Twitter,facebook,Instagram,LINE,Youtube…代表的なSNSはすぐに思い浮かぶ程に身近な存在になっているのではないでしょうか。それは企業にとっても同じで、何らかのSNSアカウントを持っていることは当たり前のようになりました。公式アカウントでは新製品発表やキャンペーンの告知、イベントの集客やリアルタイム速報など、さまざまな目的で情報発信が行われています。
さらによくみると複数のSNSにアカウントを作って連動させていたり、商品ごとに使うSNSを決めていたり、複数のアカウントを目的に応じて運用している例も見受けられます。
たしかにSNSはサービスによって利用者層も得意な使い方も異なるため、うまく使い分けたいところ。実際にどのような使い方をしているのか、皆さんがご存知の食品・飲料メーカーからいくつか取り上げて参照してみましょう。
キリングループ※1ではそれぞれの企業公式アカウントとは別に商品ブランドの公式アカウントを運用しています。企業公式アカウントはFacebook,Twitter,Instagram,Youtube,LINEを利用しています。商品ブランドで利用しているのはFacebook,Twitter,Instagramの3種類。例えば「世界のKitchenから」は全種類、「キリン一番搾り」はFacebookとTwitter、「生茶」はTwitterとInstagramというように商品ごとに使い分けています。
※キリン株式会社、キリンビール株式会社、キリンビバレッジ株式会社、メルシャン株式会社、キリンシティ株式会社、キリン・ディアジオ株式会社、スプリングバレーブルワリー株式会社、キリン・トロピカーナ株式会社を指します。
(特徴的なアカウント)
*ワイン好き!
https://www.instagram.com/winesuki_mercian/
https://www.facebook.com/winesuki.jp
キリングループ傘下のメルシャンのブランドアカウントです。
購入者層の女性イメージをうまく捉えて、ワインは大好きだけど初心者という「メルコ」を案内人として展開。女性向けのInstagramもうまく使っている印象。
*Guinness(ギネス)
https://www.facebook.com/GuinnessJapan
「ギネスとギネスファンそしてギネス・ベストパブをつなげ、より身近により楽しくギネス時間を愉しんでいただくこと」を目的としてFacebookに「Guinness® THE PUB」という仮想パブをオープン。ブランドに関する様々な情報を発信しています。
アサヒグループも商品のブランドごとに、Facebook,Twitter,YouTube,Blog,コミュニティサイト,情報サイトと利用するSNSを使い分けています。離乳食、粉ミルク、ベビーフードの和光堂が運営する子育て応援会員サイト「わこちゃんカフェ」など、会員サイトも複数運営しており、コミュニティ作りに力を入れている印象です。
(特徴的なアカウント)
*アマノ食堂(フリーズドライ)
https://www.facebook.com/amanoshokudo/
https://twitter.com/amano_shokudo
https://www.instagram.com/amano_shokudo/
「おいしい食、人、暮らし」をテーマに運営されているアマノフーズのWEBマガジンとFacebook,Twitter,Instagramを連動させています。コラムや暮らしや料理の情報など、企画が充実しており忙しい主婦層の関心をうまくとらえています。
*1本まん族
https://www.facebook.com/1pon.manzoku
https://twitter.com/ipponmannzoku_
栄養調整食品「1本満足バー」のSNSアカウント。みんなの不満を収穫して元気にしてくれるブランドキャラクター『1本まん族』がゆるーく活動中です。画像をうまく編集しており、一目でわかるおもしろネタが特徴です。
お酒/ソフトドリンク/健康/グルメ/文化・スポーツ・その他などカテゴリーごとに設定。
サントリー総合はオールSNSですが、商品ブランドは全体的にFacebook(もしくはTwitterとセットで)を利用しているケースが多い印象です。Instagramを利用するブランドは写真へのこだわりが見て取れます。例えば「ザ・モルツ」。素敵な料理や生活の一コマを切り取った写真をうまく配置して、おしゃれなお酒の空間を存分に伝えています。
(特徴的なアカウント)
*サントリーお客様サポート
https://twitter.com/suntory_cs
SUNTORY(サントリー)お客様サポートの公式アカウントが置かれています。クレームへの返信等、顧客対応の一端としての対応以外にも、サントリー商品に関するツイートを取り上げ、顧客とコミュニケーションを取るなど積極的に活用しています。
やはりどの企業もブランドごとに個別のアカウントを用意しています。定型的な告知だけしていても消費者の心を掴むことは難しいものです。お気に入りのアカウントとなりその商品のファンを作るよう、さまざまな工夫を凝らし運用されているのです。
このように公式アカウントとは別にブランドごとにアカウントを作っている企業では、担当者がそれぞれにいて個別に管理されていることが多いです。各商品に特性があり、顧客や伝えたい内容が異なるからです。そのポイントは、以下のような観点で考えてみるとわかりやすいのではないでしょうか。
成人か未成年か、男性か女性か、シニア層か子育て世代か…顧客層によってインフラとして利用すべきSNSの種類も、期待されるコミュニケーションテイストも全く異なります。顧客の嗜好や主義を把握して展開することで「レシピ動画や素敵な料理の写真なども豊富で、料理好きの女性にはたまらない」、「オリジナルキャラクターが可愛くてついつい見てしまう」というように、そのアカウントのファンが集まります。
その商品が連想させるストーリーなどブランドイメージで訴求するのにもSNSの活用は効果的です。SNS上に仮想空間を作り上げたり、ひねりのあるコンテンツを配信したりして顧客の心を掴みます。人々の生活に入り込み、「〇〇と言えばやっぱりこれ!」という商品になれば長く愛されることでしょう。
これは商品の特性ではなく、SNSを利用している目的による違いです。例えば告知がメインの使い方の場合、上記のカジュアルなコミュニケーションやブランドのイメージを定着させるための情報発信とは大きくテイストが変わるでしょう。問い合わせコメントには、カスタマーサポート的な姿勢でしっかりとした対応を行う必要があります。
このようにブランドごとに分けて運用する以上、そのテイストや投稿ルールをしっかりと設計し、ぶれずに続けなくては意味がありません。重要なポイントは、何を目的としたSNSアカウントなのかを明確にし、顧客との接点としてどのような空間を作り上げるかです。キャラクターや案内人になりきり、顧客層にあわせたコミュニケーションを行います。会話だけでなく投稿する際の文言や写真のテイスト、配置方法、すべてにこだわり進める必要があります。
いかがでしょうか。おそらくあなたが個人的にフォローしているアカウントにも、そこで醸し出される独特の空気感があるのではないでしょうか。
一方で複数のSNSアカウントを設置するがゆえに注意すべき点も出てきます。それは、企業全体のブランドイメージへの影響です。ブランドが違っていても大元は同じ企業。ソーシャルリスク対策の視点では、各アカウントの特性を活かしつつ、横断的にリスク管理することが求められます。
SNSは多くのユーザーと気軽にコミュニケーションを取ることができるのが利点ですが、その反面、悪意あるユーザーからの批判で場が荒らされたり、炎上するリスクとも隣り合わせです。また、昨今は運用者が予想できないような理由で炎上するケースも散見されます。こうしたネットでの非難は一度火がつくと予想をはるかに超えるスピードで広がります。そこでSNSアカウントを運用する企業は、ガイドラインの設定と従業員教育を行い、投稿監視(モニタリング)を実施するようになっています。
しかし、広報活動の一環として展開している企業の公式アカウントと商品ブランドごとに作り上げているSNSアカウントとでは、コミュニケーションの密度も接しているユーザー層も異なります。ソーシャルガイドラインを設定することで投稿者の姿勢については事前に統一化できますが、問題は運用中のリスク管理です。各担当者の投稿監視基準がばらばらだとチェックすべき項目が抜けてしまう可能性があります。そもそもブランドごとにあり得るコメントは全く違いますし、該当コメントを非難と捉えるか否かについては温度差もあり判断には難しいものがあります。
そのため多数のSNSアカウントを安心して運用するには、商品だけでなく企業全体のブランドも意識した、網羅性のある投稿監視が欠かせません。すべてのアカウントに共通の監視基準を設けてモニタリングし、その上で各ブランドに特化した対応を行うことで横断的なリスク対策が実現できます。この横断的なリスク対策こそが、各商品の特性やブランドイメージを重視した顧客とのコミュニケーションを可能にし、ひいては企業ブランドへも良い影響を与えていくことでしょう。
複数のSNSアカウントへの横断的なリスク対策について、具体的にどう進めて良いかわからない、改善すべき点がないか不安だという方は、ぜひ一度アディッシュへお問い合わせください。
アディッシュの投稿監視はあらゆる業界での豊富な実績によるノウハウを持っています。お客様とご相談し、企業の監視基準とは別に各ブランド・アカウントの特性を意識した監視基準も定めて運用することができます。運用中は専任チームがリアルタイムにリスクをチェックしてお知らせするので、お客様は各事象への対応に集中することができます。 |