インターネットモニタリングブログ | アディッシュ

海外で急成長のバイシクルシェア。国内普及で抱える問題と対策とは?

国内での成長が期待され、ますます注目を集めているバイシクルシェア。今回は、発祥地である中国の大手2社「ofo」と「Mobike」を取り上げます。日本へも進出しているこの2社を徹底比較し、バイシクルシェアで利益を上げる仕組み、日本で始める場合の課題に迫ります。

後編はこちら「海外に学ぶバイシクルシェアサービスのマナー問題と対策

ライド系シェアリングエコノミーは、アメリカ発のオンライン配車サービス「Uber」や「Lyft」、ソフトバンクが支援し2018年春の日本展開を目指す世界最大級の中国「滴滴出行」などが世界で急成長しています。
これらは自動車の配車サービスですが、それに対して、自転車版のシェアリングサービスとして注目されているのがバイシクルシェア。
その中国大手企業「ofo」はソフトバンクと協業を発表し、2017年9月から東京と大阪でサービスをスタートさせています。
日本企業の新規参入も積極的で、国内成長が期待されるバイシクルシェアの利用方法を、「ofo」とともに中国で人気の「Mobilke」と比較。日本でバイシクルシェアサービスを展開する際の課題点と対策案を考えてみました。

※調査内容は2017年11月のもの。

1. 「ofo」と「Mobilke」2社の比較

中国で広く利用されている「バイシクルシェア」は、専用のスマホアプリで自転車を探すだけの自転車貸出サービス。目的地に着いたらドックレス(乗り捨て)ができるところに使い勝手の良さがあり、今では生活になくてはならないサービスとなっています。
中国国内にはバイシクルシェア企業が20社以上あると言われていますが、その中で代表的なのが「ofo」と「Mobike」です。
利用料金はofoが0.5元(約8円)/30分。対するMobikeは1元(約16円)/30分で、ofoはMobikeの半額になっています(ただし、ofoの利用は1時間単位から)。
デポジット(初期保証金)の金額においてもofoは99元(約1,584円)で、Mobikeは299元(4,822円)です。価格ではofoが魅力的に見えます。

※2017年3月にofoはアリペイと提携したことにより、信用を獲得している利用者はデポジット不要で利用できるようになりました。ここでいう信用とは、アリババグループのクレジットサービスによって、個人のオンライン上の支払い金額や支払い遅延の有無などから信用スコアを算出し点数化されたものです。規定以上の点数保持者はデポジットが不要になります。

一方、使い勝手の良さを見ると、MobikeはGPS探索でリアルタイムに空車情報を確認することができ、施術方法はQRコードを読み取るだけのデジタル式です。対するofoは周辺の予測台数を知ることしかできません。また、施錠方法は暗証番号をずらすなど、いわゆるダイヤル施錠です。実態としては、少し歩けばすぐに自転車が見つかるため、空き自転車の位置情報がなくとも、さほど不便はしないようです。

2. バイシクルシェアのビジネスモデル

バイシクルシェアサービスの運営には、自転車のパンクや故障の修理など、メンテナンスのコストが懸念されます。利用料も低価格のため、利用料収入だけで黒字にしていくことは難しそうです。
では、収益はどこから得ているのかというと、主に利用者から預かるデジポットの運用です。
利用者1,000万人、1人あたりのデジポット額299元のmobikeの場合、トータルで約30億元(約483億円)が集まることになります。このデジポットを資金源に金融投資や他のビジネスに投資すれば利益をあげることができ、さらにアプリ内に広告を掲載すれば広告収入も得られます。
また、自転車利用者の行動データが蓄積されることでビッグデータとなり、性別や年齢などの登録者データで細かく分析、新たなビジネスチャンス獲得やビジネス変革に大いに活用できるという点でも魅力的なビジネスモデルといえるでしょう。

3. 中国でのバイシクルシェアの背景

中国のバイシクルシェアサービスは、2015年の開始後1年で利用者2,000万人に上り、2019年には1億人を突破するとされ、まさに急成長のビジネスです。
かつて主要交通手段が自転車であった中国では、現在もほとんどの道路に自転車の専用レーンが引かれています。都市部は自動車渋滞が激しく、近場の移動であれば自転車の方が速い場合もあり、また料金もバスと同じかそれより低料金です。
注目すべきはドックレス(乗り捨て)をするための駐輪スペースを、自治体側がいたるところに配備している点です。乗り捨てができるスペースを増やすことはバイシクルシェアサービスを展開する上で重要な課題であり、それを自治体が提供している点が中国の特色です。
また、都市部の98%が利用しているアリペイやウィーチャットペイなどのオンライン決済サービスが使えるのも人気の理由です。
こうした中国の環境がバイシクルシェアの流行を後押ししているといえます。

さらには、自転車を故意に破損させたり、サドルなどの部品を盗るなど深刻なマナー問題には政府が一役買っています。
マナーの悪い利用者は、政府主導のもと、バイシクルシェア企業間で情報共有が行われます。そうなると、例えばofoの自転車に迷惑行為をした利用者は、Mobikeなど、他の企業のバイシクルシェアサービスも利用できなくなります。
国民一人ひとりの信用をデータベース化することを目指す中国政府が、トップダウンでシェアサービスと連携し、情報共有ができる仕組みを作っているのです。
バイシクルシェアを展開する上で、このようなマナーの問題は必ず考えなければならない課題です。現に香港のバイシクルシェア企業gobee.bike社は、開始直後から自転車を盗まれる、壊される、川に捨てられるなどの悪質行為に悩まされました。

4.日本でバイシクルシェアサービスを展開するときの注意点

日本でバイシクルシェアサービスを展開する際は、以下の点に注意する必要があります。

1 「拾いやすく、捨てやすい」ができるようにすること

使いたいときに自転車をどこでも拾えて、目的の場所に到着したら乗り捨てができること。
バイシクルシェアサービスを展開する上で最も重要なことです。
都市部でどれだけステーション(乗り捨てができるスペース)を増やすことができるかが課題となってきます。

2 本人確認を徹底する

バイシクルシェアに限らず、シェアリングサービス全体で必要性があるのは契約するときの本人確認です。
マナー違反の抑止力になるほか、損害を被ったときには住所で訴状も送ることもできます。
本人確認には免許証や保険証が一般的ですが、クレジットカードでも本人確認ができ行えます。

3 健全なレビューによる安心な場づくり

アメリカのライドシェア企業Uber社は、ドライバーと利用者を相互に評価するシステムを備えています。利用者の評価が高ければ、車が拾いやすくなり、ドライバー側にはより多くの利用者が割り当てられます。
このように健全な評価、レビューが出来るオンライン上の場を提供することが、運営側にも求められると言えるでしょう。
例えば、ネガティブな投稿がされた際に、どのような対応をする必要があるのか、その信憑性はあるのかなど、コミュニティ上の投稿監視は必要です。それ以外にもSNSで拡散する風評被害への対策も考えておく必要があります。
動画やチャットなどリアルタイム性の高い投稿を監視するのが難しい場合、投稿監視を代行するサービスを利用することも1つの選択です。

5.まとめ

中国でバイシクルシェアが急成長した背景には深刻化する排気ガス問題や交通渋滞の緩和があり、その上で低料金、モバイル決済の導入、ドックレスなどを取り入れ、利用しやすくすることで急速に成長しました。
日本でバイシクルシェアサービスを運営する際は、ドックレスができる駐輪スペースの確保や本人確認の徹底、運営に対しての評価や投稿を常にモニタリングし、ネガティブな評価への対策を瞬時にとることが重要な課題です。

アディッシュでは本人確認の運営、コミュニティサイトの健全化SNS上の監視の代行をしています。お気軽にお問い合わせください。