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2025.07.18

広告審査通過率を劇的に改善!薬機法・景表法に強いクリエイティブ運用の実践法

はじめに|広告審査で悩んでいませんか?

「広告が審査に通らない」「出稿直前にNG表現を指摘される」──そんな経験をお持ちではないでしょうか。

審査落ちによる修正作業やスケジュールの遅延は、広告出稿の機会損失につながります。さらに、万が一違法な表現を含んだ広告が出てしまえば、行政処分や罰金に加えて、世間からの批判や炎上による企業イメージの毀損にも発展しかねません。

こうしたトラブルの背景には、マーケティングや制作担当と、法務・コンプライアンス部門の間にある“表現”に対する認識の違いが存在します。商品の魅力を最大限に伝えたいという想いと、消費者保護の観点から誤解を招かない表現に整えたいという想いは、どちらも正当なものです。

薬機法や景表法といったルールは、消費者が安心して商品を選べるようにするための前向きな仕組みです。法令を遵守しながら、いかに魅力的な表現に仕上げるか──そのためには、マーケティング部門と法務が早い段階から連携し、お互いの意図を共有しながら進めることが重要です。一方通行の「ダメ出し」や修正の繰り返しではなく、両者が協力して“伝わる表現”を共に構築していく姿勢こそが、広告審査をスムーズに通過させる鍵となります。

広告審査をスムーズに通過させるには、クリエイティブを作成するマーケティングや制作担当と、コンプライアンスや法務部門が連携し、構造的にリスクを回避できる体制づくりが不可欠です。本記事では、薬機法・景表法に基づいた広告表現の基本から、NG例、制作現場との連携、チェック体制の整備まで、広告審査に強いクリエイティブ運用の方法をわかりやすく解説します。

1. 広告表現でNGになる理由とは?──薬機法と景表法の基本を押さえる

広告制作において、注意すべき法律には、例えば「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」と「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法・景表法)」等があります。
これらは広告表現の自由度に大きな制約を与えるため、知らずに使った一言が違法表現=審査NG・行政処分・炎上につながることもあります。

広告表現に関わる2つの法律と違反リスク

区分

薬機法

景品表示法(景表法)

対象となる商材

医薬品、医療機器、化粧品、健康食品など

商品・サービス全般

目的

消費者の健康を守る(虚偽・誇大な効能表示の防止)

消費者の合理的判断を守る(誤認の防止)

主な規制内容

医薬品でないのに「治る」「効く」などの表現を禁止

実態以上の品質・価格を訴求する誇張表現を禁止

NG表現例

「ガンが治る」「免疫力アップ」「ニキビ改善」

「今だけ半額!」「業界No.1」「世界最高品質」

違反時のリスク

行政処分・刑事罰

措置命令・課徴金(対象売上の最大3%)
※再違反時は最大4.5%へ引き上げ(2023年6月施行の改正法により)

※本記事の内容は、2025年7月時点の法令および関連ガイドラインに基づいています。最新の法改正や行政解釈にご留意ください。

このように、同じ言葉でも「どの商品で使ったか」によってNGになる基準が異なるため、商品カテゴリ別に注意が必要です。重要なのは、これらの法律が「消費者の誤認を防ぐ」という共通の目的を持っていることです。広告表現に携わる以上、法令違反を「知らなかった」では済まされません。

2. 現場で起こりがちなNG表現と、その改善アプローチ

広告制作の現場では、つい断定的で魅力的な言葉を使ってしまうことがあります。しかし、それが薬機法や景表法の違反に直結するケースも少なくありません。ここでは、過去の行政指導や業界ガイドラインで指摘されやすい表現パターンと、実務上よく見られる表現の工夫例をご紹介します。あくまで一例であり、最終的な適法性の判断については専門家へのご相談をおすすめします。

 1. 断定表現:「治る」「効く」「改善する」

  • NG例:「肩こりが治る」「シミが消える」「血圧が下がる」
  • なぜNG?:医薬品以外の商品に医療的効能を謳っているため、薬機法に抵触
  • 改善案:「健やかな毎日をサポート」「肌にうるおいを与える習慣に」など、機能表現にする

2. 誇大表現:「必ず」「絶対」「モニター全員が実感」

  • NG例:「必ず痩せる」「全員が効果を実感!」「日本一の満足度」
  • なぜNG?:根拠なく断定した表現は、優良誤認表示や不実証広告規制に該当する恐れがある。特に「全員」「100%」といった誇張表現は、実態を超えた期待を与えかねないため、注意が必要。
  • 改善案:「多くの方に愛用されている」「利用者から好評を得ている」など、断定を避けた表現にする。調査結果を使用する場合でも、数値化は控え、印象操作とならないよう十分に配慮する。

    ※化粧品等の広告においては、「満足度93%」などの数値訴求は、効能・効果の保証と受け取られる可能性があるため、原則として避けるべきとされている。
    ※参考:化粧品等の適正広告ガイドライン[2020年版]E22「調査結果に基づく数値」の表現

3. 「※個人の感想です」だけでは違反回避にならない

  • NG例:「これはすごい!※個人の感想です」
  • なぜNG?:「個人の感想です」などと記載していても、実際以上の効果を印象づける表現は、景表法上の不当表示とみなされるおそれがある。消費者庁も「商品やサービスの効果について実際以上に著しく優良であると一般消費者に誤認される表示であれば、不当表示に該当することがある」と明記している。(令和4年12月改訂資料より)
  • 改善案:「体験には個人差があります」と目立つ場所に表示し、体験談に頼りすぎずエビデンスや第三者による調査結果も併せて示す。

    ※参考:消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(平成28年6月/令和4年12月改訂)

4. よくあるNG表現と代替案一覧表

NG表現

なぜNG?

改善表現例

「治る」「効く」

医薬品的効能の誤認(薬機法)

「〇〇をサポート」「健やかな毎日を応援」

「絶対」「確実」

効果の保証は不実証広告規制の対象

「〇〇が期待されています」「〇〇を目指す方に」

「今だけ半額」

実態と異なる場合は景表法違反

「通常〇円→〇円(〇月〇日まで)」

「業界No.1」

根拠が不明だと優良誤認表示

「〇〇調査による(第三者機関名)/〇年〇月時点」など、出典を明記

5. カテゴリ別ガイドラインにも注意を

化粧品、健康食品、医療機器などの業界では、独自の広告ガイドラインが存在します。 例えば「化粧品等適正広告ガイドライン」では、使用できる効能表現56種が明記されています。
参照:日本化粧品工業会「化粧品等適正広告ガイドライン」

自社の商品カテゴリに合ったガイドラインを確認し、それに沿って表現を選ぶことで、審査リスクは大きく減らせます。

3. 信頼される広告表現のための社内体制づくり

広告表現のリスクを最小限に抑えるためには、コピー単体の修正だけでなく、組織的な審査体制の整備が不可欠です。コンプライアンスに配慮しながら魅力的な表現を実現している企業は、例外なくチェック体制と役割分担が明確になっています。

法務・制作・マーケの三者連携がカギ

広告審査の責任を法務だけに押し付けていては、トラブルは防げません。
重要なのは、法務・制作・マーケティングの3部門が一体で連携することです。

マーケ:訴求ポイントを整理
制作:広告案を起案
・法務:事前レビュー・NG表現の洗い出し

という流れを初期段階から実践すれば、「あとからNG修正」による無駄を防げます。部署間で知識と視点を補完し合う体制が、表現の質とスピードの両立を支えます。

標準化された監修フローが審査精度を高める

チェック体制は「テンプレート化」して初めて機能します。以下のような審査フローの雛形を全社で共有することが効果的です:

  1. 企画初期:マーケが訴求案を作成 → 法務が禁止表現リストを確認・懸念点を指摘
  2. 制作段階:ガイドラインに沿ってクリエイティブ制作、必要に応じて法務相談
  3. 一次審査:完成案を法務がレビュー、修正ポイントを提示
  4. 再修正・二次チェック:制作が修正し、別の担当者または上長が最終確認
  5. 承認・記録保管:全員承認後に出稿。チェック履歴を保存し、次回の改善に活かす

属人的な「◯◯さんだけがわかるチェック」ではなく、誰が見ても判断できる仕組みと記録管理を徹底することが重要です。

属人化を防ぐには「責任の明確化」と「教育の仕組み」を

審査業務の属人化を防ぐには、「誰が何をチェックし、最終承認するのか」をあらかじめルール化することが必要です。たとえば:

・最終承認:法務部長がGo/No Goを判断
・一次チェック:各部署のコンプライアンス担当者が実施
・規程化:広告出稿前には必ず法務承認が必要、と明文化

さらに、社内教育も重要です。全社員向けの年1回の基礎研修や、制作・マーケ部門への専門研修を実施し、法令知識をチーム全体で底上げしましょう。違反事例やヒヤリハットはデータベース化し、定期的に共有・復習する仕組みを設ければ、再発防止にもつながります。

4. クリエイティブ制作と法令チェックをどう連携するか

広告審査をスムーズに通すには、制作チームと法務・薬事などのチェック担当が密に連携する仕組みが欠かせません。
制作の初期から審査・承認に至るまでの各段階で適切に連携を図るためには、「制作前」「制作中」「教育・共通言語化」の3つの視点が重要になります。

制作前|「表現OKライン」のすり合わせで迷いを減らす

広告制作に入る前に、使いたいキーワードや訴求ポイントを法務・薬事とすり合わせておくことが重要です。
たとえば:
・「この商品は◯◯効果を謳っても大丈夫?」
・「〇〇成分の効能をどう表現すれば薬機法に抵触しない?」


といった疑問を企画段階で投げかけ、表現可能なラインを明確にすることで、制作初期からNGリスクを最小限にできます。

過去の審査通過事例や、各業界ガイドライン(例:化粧品の適正広告ガイドライン)をもとに「ここまではOK/ここからはNG」を具体化しておきましょう。

制作中・校了前|小刻みなフィードバックで手戻り防止

広告制作の途中段階や校了前には、都度フィードバックできる導線を確保することが重要です。
例:
・コピー作成中の文言を、法務にチャット相談できるようにする
・デザイン案が完成したら中間レビューを設ける
・毎週15分程度の定例ミーティングで懸念点を共有する

こうした運用で、「出稿直前にNG判定で全面修正」といった非効率を防げます。また、法務担当も「表現上の工夫の余地がある点を共有する」といった建設的な関わり方を心がけることで、より良い連携が図れます。

共通言語づくり|制作と法務が歩み寄る工夫を

制作チームと法務では前提知識も言葉の使い方も異なるため、認識のずれが起こりがちです。これを防ぐには、「共通言語」になる資料や教育機会が有効です。
具体策:

  • 使える表現一覧/チェックリストを共有
    (例:「医薬部外品で使える効能表現」「景表法上の注意表現」など)
  • NG事例の共有会を実施
    → なぜその表現が違反になったか、クリエイティブ目線で解説
  • 法務側もマーケ視点を理解
    → 表現意図や訴求ポイントを踏まえて代替案を提示できるようにする

こうした取り組みを通じて、「法令を守りながら売れるコピー」を両者で共創する文化が育ちます。

5. 内製と外部監修の“使い分け”で審査体制を最適化する

広告審査の精度を高めるには、社内の体制整備に加えて、外部の専門リソースを適切に活用することが効果的です。特に広告量が多い企業や、法令解釈が分かれやすいジャンルを扱う場合には、「どこまでを内製で対応し、どこからを外部に委ねるか」の判断が成果を左右します。

内製で対応すべき業務と、外部に委ねるべき領域

日々発生するSNS投稿や定型フォーマットの広告チェックなど、ルール化しやすい業務は、社内でガイドラインを整備することで内製対応が可能です。一方で、以下のようなケースでは専門的な知見が求められるため、外部のチェック体制を導入するのが適しています。

  • 新商品の大型キャンペーン
  • 法改正直後で判断が難しい表現
  • 医療・健康・美容など規制が厳しいジャンルの訴求内容
  • 海外展開を視野に入れた多言語広告のチェック

社内に法務や薬事部門がある企業でも、第三者の視点による監査やダブルチェックを外部に依頼することで、属人化や見落としのリスクを軽減できます。

外注活用で失敗しないためのポイント

外部パートナーを選ぶ際は、「指摘して終わり」ではなく、改善案まで提示してくれるかどうかが重要な判断基準です。
 たとえば、「この表現は薬機法違反の恐れがあります」とだけ指摘されても、実際にどのように修正すればよいか分からなければ現場は混乱します。単なる指摘ではなく、“代替表現の提案”まで行ってくれる外部パートナーを選びましょう。

また、外注先には自社の商品特性や判断基準を丁寧に共有することが欠かせません。事前のレギュレーション説明や、定例のフィードバック会を設けることで、意思疎通の精度が高まります。スケジュール面でも注意が必要です。表現チェックは納期ギリギリで依頼すると精度が下がるため、制作初期段階から外部を巻き込む運用設計を行いましょう。

審査支援パートナーとしての「広告出稿者向け広告審査サービス」

広告チェック体制に課題を感じている企業にとって、アディッシュが提供する「広告出稿者向け広告審査」は実務面での負担軽減と品質向上をサポートするサービスです。

  • 自社専用の広告表現ルールを整備し、チェックガイドラインを構築
  • 関連法令や業界の広告基準、運用慣行などを踏まえて素材を確認
  • 合意済みのガイドラインと表現リストをもとに、チェック業務を実施
  • 365日体制で量にもスピードにも対応

自社だけでは対応しきれない広告量や判断に迷う表現にも、ガイドライン運用とチェック体制の強化によって、違反リスクを抑えながら出稿スピードを確保できます。

まとめ|広告審査体制の見直しが、企業ブランドを守る第一歩

薬機法・景表法に違反した広告表現は、掲載拒否や課徴金といった直接的な影響だけでなく、SNSでの炎上や風評被害を通じて、企業全体の信頼を揺るがす深刻なリスクにもつながります。特に、情報拡散のスピードが速い現代においては、一つの表現ミスが一瞬で大きなトラブルに発展する可能性があります。

こうしたリスクを未然に防ぐためには、日々の広告表現を丁寧に見直し、社内のチェック体制やガイドラインを整備することが欠かせません。とはいえ、すべての広告を内製体制だけでカバーし続けるのは、リソースや専門性の観点から難しいケースも多いのが実情です。そこで重要なのが、社内チェック体制に加えて、外部の運用支援を効率的に組み合わせることです。第三者によるチェック体制の構築支援や、運用実務のサポートを通じて、属人化や見落としを防ぎながら、広告の品質とスピードの両立を図ることができます。

アディッシュは、10年以上にわたり広告やSNS・コミュニティ領域のモニタリングやリスク対策を支援してきました。その知見を活かし、広告出稿企業様に向けた「広告審査支援サービス」をご提供しています。

  • 広告審査に通らず、直前で差し戻されることが多い
  • 薬機法・景表法への対応に不安がある
  • 出稿本数が多く、社内リソースだけではチェックが追いつかない 

こうした課題に対し、事前に取り決めたチェック基準に基づき、広告素材の確認作業を365日体制で対応。社内リソースの負荷を軽減しながら、スピードと品質の両立をサポートします。

このようなお悩みがある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
広告出稿者向け広告審査サービス

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この記事を書いた人

アディッシュのモニタリングソリューション「MONI」

ライター

アディッシュのモニタリングソリューション「MONI」

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