料理レシピサイトで意図しない性的な広告が掲載され、運営企業が謝罪文を発表する事態が発生しました。また料理雑誌などを発行する出版社のホームページにおいても同様に不適切な広告が掲載され、やはり謝罪と再発防止の声明を出しています。
これは広告が「アドネットワーク」を通じて自動配信される仕組みによるもので、メディアが個別の広告内容を完全に管理できないことに原因があると見られています。
メディア運営企業は不適切な広告を掲載しないために何ができるのでしょうか?
もしも掲載されてしまった場合の対応と合わせて、不適切広告のリスク対策について解説します。
■アドネットワークと広告コントロールの課題
Webサービスの収益化の一つの方法が広告の掲載です。その際に利用されるのがアドネットワークと呼ばれる広告配信の仕組みです。
アドネットワークは広告主と多くのメディア(Webサイト、ブログ、SNSなど)をつなぎ、最適な広告を自動で表示させます。これによってサイト運営者は個別に広告を管理する必要がなく、広告主も広範囲に広告を出せます。
アドネットワークの広告と従来の広告(テレビ・新聞・雑誌)との大きな違いの一つが審査の仕組みです。
従来の広告では、広告を掲載するメディア(テレビ局、新聞社、雑誌出版社など)が広告内容を事前に厳しく審査していました。「公序良俗に反していないか」、「虚偽や誇大表現がないか」、「掲載メディアのブランドイメージと合っているか」などの観点でチェックされ、メディア側が最終的な責任を持っています。そのため不適切な広告が掲載されるリスクは比較的低いと言えるでしょう。
一方でアドネットワークを通じたインターネット広告では、広告の掲載が自動化されているため、従来のような個別の事前審査は行われません。広告主が登録した広告はそれぞれのアドネットワーク側のシステムが審査を行います。その基準はアドネットワークごとに異なっています。メディアではなくアドネットワークが基本的には広告掲載の管理を行います。
それではこのアドネットワークの仕組みにおいて不適切な広告掲載リスクはなぜ高まるのでしょうか?
■なぜ不適切な広告が掲載されるのか?
アドネットワークとしても不適切な広告を防ぐための取り組みを行なっています。広告の質の低下が起こればメディアは別のアドネットワークに乗り換えてしまうためです。
一般的にシステムによる自動審査と目視による審査を組み合わせて、それぞれのアドネットワークが定める基準に違反していないかをチェックしていると言われています。
それでもメディアが望まない広告が掲載されてしまう原因は以下にあります。
1.悪質な広告主による審査すり抜け
アドネットワークによる審査をすり抜けて不適切な広告を掲載しようとする悪質な広告主がいます。問題のない広告のように偽装したり、複数のアカウントを作成してブラックリストを回避したりすると言われています。
2.メディアによるフィルタリングの失敗
メディアも望まない広告が掲載されないように設定することができます。しかしこのフィルタリングが適切に機能しないと、不適切な広告が掲載される可能性があります。設定ミス、キーワードの抜け漏れなどが原因となり、望まない広告の表示を防げないことがあります。
上記に加えて、アドネットワークの審査が自動化されていることにも要因があると言われています。個別の審査を時間をかけて行うわけではないので不適切な広告がすり抜けてしまう可能性があります。
メディアもWebサイトやブログなどの運営を通じて収益を増やしたいと考えています。そのためには多くの広告を受け入れる必要があり、掲載基準がつい甘くなってしまうこともあるでしょう。このような背景も不適切な広告の掲載の要因かもしれません。
■不適切広告を防ぐための事前対策
アドネットワークを利用するメディア運営企業にとって、不適切な広告の掲載を防ぐことはブランド価値を守るうえで重要です。完全にコントロールすることは難しいものの、以下の対策を講じることでリスクを最小限に抑えることができます。
1. アドネットワークのフィルタリング設定の最適化
カテゴリブロックを活用し、例えば「成人向け」「ギャンブル」「詐欺的金融商品」などの不適切な広告カテゴリを除外することができます。キーワードのフィルタへの追加、広告主やドメイン単位のブロックなどの方法により、不適切な広告の掲載を防ぐことができます。
2. 定期的な広告監視とチェック
定期的な広告監視とチェックは不適切な広告の掲載を防ぐために不可欠です。配信されている広告を定期的に確認し、問題のある広告を発見した場合はブロックリストへ追加します。悪質な広告主は審査をすり抜けるため、監視の継続が求められます。
前提としてアドネットワークの責任で悪質な広告が掲載されないように管理をすべきです。しかし、アドネットワーク任せでは不適切な広告を防ぐことはできません。メディアも自分たちの価値を守るためには対策を取る必要があります。
■継続的なチェックと改善が必要
メディア運営企業は、サイト上の広告内容を適切に管理する責任があります。
アドネットワークによる自動配信であっても、不適切な広告が表示されるとメディアの信頼が損なわれ、ユーザー離れやブランド価値の低下につながる可能性があります。
今回の不適切広告掲載の騒動においてもメディアはアドネットワークの責任とすることなく、謝罪と再発防止のための調査を行うことを発表しました。一般のユーザーの立場ではアドネットワークの仕組みを把握していないため、不適切な広告はメディアの責任と捉えてしまうかもしれません。
そのためには定期的に広告を巡回し、不適切な広告がないか確認することが不可欠です。アディッシュでは定期的なモニタリングと報告を24時間365日のサービスとして提供しています。ぜひご相談ください。