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2018.02.08

ソーシャルリスクはこう防げ。広報部門編

ネット上のコミュニケーションが世論に及ぼす影響力は大きくなっている昨今、炎上によるブランドの毀損やネットに端を発する風評被害の例は枚挙にいとまがありません。企業経営においてソーシャルリスク対策は非常に重要です。 以前のコラム「ソーシャルリスクはこう防げ。管理部門向け4つのケーススタディ」では広報、人事、法務、情報システムなど管理部門に属する組織のソーシャルリスク対策を紹介しました。今回は有事の際に陣頭指揮を取ることが多い広報部門を深掘りし、ソーシャルリスク対策・対応の全体像を踏まえながら紹介します。

炎上未経験。全体の流れが分からないという広報担当者へ

簡単にいうと、広報担当者のソーシャルリスク対策とは、起こりうるリスクごとに適切な発生時の対応を整備し、有事の迅速な対処に備えることです。

そのため最初の一歩は「インターネットの動向を感知する機能」を持つことから始まります。ソーシャルメディアに投稿された情報を収集・把握(ソーシャルリスニング)し、投稿内容の危険度を分析します。ネガティブかポジティブか、批判内容は何か、批判対象となっている商品・サービスは何か、発言者は誰か、といった基準です。まずはリスクを感知できる体制を整備する必要があります。

検知したリスクにどう対応していくかは順を追って判断していきます。以下の流れをイメージしましょう。

ソーシャルリスク対応の意思決定ループ

リスクであると判断された後は、投稿ボリューム(量)とインパクト(質)の観点で分析し、経営活動への影響を踏まえて最適な行動を検討します。最終的には社内の当該部門による対処、自社Webサイト等での情報開示を行い、事態の収束を目指します。

ソーシャルリスク検知に関する課題と対策

上記の通り、広報部門はインターネット上の無数の情報からリスクを検知し具体的な対策の要否を判断できるよう、情報を収集し分析するという重要な役目をおっています。

とはいえ、ソーシャルリスク対策で押さえておくべきインターネット上のメディアとは何なのか、またリスクを検知する方法について改めて知りたいと思う方も多いでしょう。以下にてご説明します。

(疑問1)押さえておくべきインターネット上のメディアとは

インターネットで情報を発信しているメディアは、大きく分けて消費者メディア(CGM)、Webニュースメディア、マスメディアの3つに分類して考えられます。

それぞれの代表的な例、炎上に発展する場合の関係性についてまとめました。

タイプ 概要
消費者メディア(CGM) CGMとはConsumere Generated Mediaの略で、消費者によって生み出されるコンテンツ。
  • SNS(Twitter、Facebook、LINE、Instagram等)
  • ブログ(Ameba、livedoor、はてなブログ等)
  • まとめサイト(Naverまとめ、Togetter等)
  • 動画サイト(YouTube、ニコニコ動画等)
  • ソーシャルブックマーク(はてなブックマーク)
  • クチコミ・レビューサイト(Amazon、価格コム等)
  • Q&Aサイト(Yahoo!知恵袋等) など

炎上騒動との関係性:

  • SNSやブログが告発の舞台や、問題投稿の発端となる。
  • ユーザー同士が交流して、相互に支援する。
  • Twitterによって広く拡散される。
  • SNSで騒動の賛否について議論が広がる。
  • まとめサイトで騒動が集約される。
  • 関連するクチコミ・レビューサイトが荒れる。
  • 動画サイトで独自映像や音声が流れる。コメント欄に反応が集まる。
  • インフルエンサーが批判記事や検証記事を公開する。
Webニュースメディア インターネットを主軸とするニュースメディア。
  • IT系情報を幅広く扱うメディア
  • マスメディアと同じようなテーマを幅広く扱うメディア
  • インターネットのトレンドを幅広く、深く扱うメディア
  • 各種専門分野を扱うメディア
  • 専門家のオピニオンを発表するメディア など

各ジャンルに総合メディアと深掘りメディアが存在する。
メディアがネットワーク化されている場合は、記事がポータルサイトやニュース集約サイトにも配信される。

炎上騒動との関係性:

  • ネット動向をウォッチし炎上騒動を注目する。
  • 炎上騒動を発見し次第、対象に取材して記事にする。
  • 謝罪や対策発表など、企業対応を記事にする。
  • ネットユーザーに炎上騒動を認知させる。
  • オピニオンメディアが要因分析や見解を出す。
マスメディアのニュースメディア 伝統的メディアが開設するニュースメディア。
  • 新聞社ニュースサイト
  • 通信社ニュースサイト
  • テレビ局ニュースサイト
  • 出版社ニュースサイト

炎上騒動との関係性:

  • 実害や法令違反、インパクトの大きさ、他社記事などを考慮して取材を判断し、記事や放送を出す。
  • 幅広い層に炎上騒動を認知させる。
  • 記者は必ず「裏取り」をするため、デマやフェイクニュースを訂正する役目を負う。
  • 社会問題化した場合は取材を継続して記事を書く。

これらの3つのメディアが相互補完的に存在し、ネット上のニュースを形成しています。特にSNSの普及により消費者メディアの影響力は増しており、炎上の芽となるような話題が出ていないかエゴサーチを行い、常にチェックしておく必要があるでしょう。そのほかにも動向を継続的にチェックするために広報やデジタル関連の専門誌をチェックする、PR会社やネット広告などの専門会社に相談する、といった方法があります。

(疑問2)リスク検知はどのように行うべきか

日常的にエゴサーチを行い、自社や商品に関するネット上の評判を把握します。
自社や商品に関して想定しうるリスクワードをできるだけ具体化して書き出し、そのワードごとに調べるのです。ただし、自身で出来る範囲は限られるため、リソースに不安がある場合は専門サービスの活用も視野に入れて検討しましょう。

リスク発生時の対応フローを整備する

リスクの芽を見つけたら、それがリスクであるか否か、対応する必要があるか方向性を決めます。

例えば、
・異物混入の場合は製品回収を行うのか否か
・Web動画が批判された場合は動画を削除するかどうか
・従業員の問題投稿発覚の場合の処罰と改善プログラムはどうするか

すべて経営活動への影響度を考慮した上で意思決定を行います。

ここで重要なのは二つです。
一つはできるだけ想定リスクを具体化しておくことです。事象ごとに関係部署が異なるため、対応すべき事象が明確であると動きやすくなります。まさに、備えあれば憂いなし。落ち着いて対処できるよう準備しましょう。

そして二つ目は、経営層や関係部署の理解を得ることです。広報部門ですぐれた対応フローを考えても、関係部署の協力が得られないと円滑な対応は実現できません。周囲に危機感がない場合には積極的にコミュニケーションを取っていく必要があります。よその炎上話は対岸の火事のようなもの。なかなか自分ごと化するのは難しいかもしれませんが、失敗例・成功例を交え、積極的にソーシャルリスク対策の重要性を説いていきましょう。

まとめ

「炎上」の話題性を逆手にとり、ネットで叩かれるような発言や取り組みを敢えて行い注目を集める手法を得意とする人もいますが、多くの広報担当者は「できれば避けたい」と思っているでしょう。

しかし、ソーシャルリスクは早期に適切な対処をすれば大騒ぎにはなりません。いたずらに恐れるのではなく、まずはしっかりと対策を取ることが重要です。

起こりうるソーシャルリスクを具体化して適切なエスカレーションを決めておくこと、着実にリスクを検知できるような仕組みを作ることが広報担当者には求められます。さらに有事の際の迅速な対応に向けて、日頃から社内におけるコミュニケーションに注意を払い、関係各所の理解を得られるような働きかけを行っていきましょう。

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この記事を書いた人

アディッシュのモニタリングソリューション「MONI」

ライター

アディッシュのモニタリングソリューション「MONI」

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