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2025.11.13

SNS時代の風評被害対策マニュアル|初動・拡散防止・再発防止まで徹底解説

はじめに|“1時間でブランドが揺らぐ時代”のリスク

SNSや口コミサイトの普及により、企業の評判はかつてないほど可視化され、そして“リアルタイム”で変動するようになりました。
一人の投稿が1時間で数万件に拡散し、翌日にはニュース化──そんな事例は珍しくありません。しかも、投稿の多くは「誤解」「感情的反応」によって生まれます。

たとえば、接客対応を巡る誤情報が拡散し、予約キャンセルが殺到したホテル。広告表現が「不適切」と指摘され、炎上後に販売を停止したブランド。これらはすべて、初動の遅れと情報監視体制の不足が招いた損失です。
本記事では、風評被害の構造と初動・拡散防止・再発防止の3段階対応を徹底解説します。

1. 風評被害とは何か──誤情報・炎上・批判の違い

「悪評」と「誤情報」の線引き

風評被害とは、「事実と異なる情報や誤解」が企業・ブランド・個人の評判を損なうことです。
ただし、SNS上では“正当な批判”“虚偽情報”が入り混じり、判断を誤ると二次炎上を招きます。

区分

特徴

適切な対対応

批判

実際の体験や感想に基づく不満

傾聴・改善・誠実な対応

誤情報

事実と異なる・誤解を誘発する投稿

迅速な訂正と周知

炎上

批判や誤情報が拡散・感情的連鎖

組織的な危機対応が必須

“批判”に対して過剰反応すると信頼を損ね、“誤情報”を放置すれば拡散が加速する。この判断軸を明確に持つことが、初動対応の出発点です。

発生源別のリスク分類

風評はSNSだけでなく、複数のチャネルから発生します。

  • X(旧Twitter)/Instagram/TikTok:拡散力が圧倒的。短時間で炎上化する傾向。
  • 口コミサイト(Googleマップ・食べログなど):投稿が長期間残り、検索経由で信頼低下を招く。
  • 掲示板・匿名サイト:根拠のない書き込みや個人攻撃が起きやすい。誹謗中傷・個人情報流出の温床となるケース
  • ニュース/まとめサイト:SNS発の情報を“報道化”し、印象が固定される。

それぞれの特性を踏まえ、監視・検知体制を組み合わせることが重要です。

2. 初動対応の鉄則──拡散を止める“最初の24時間”

1. 事実確認:最初の1時間が分岐点

炎上対応において、最も危険なのは「感情的な即反応」です。
まずは、投稿の真偽・拡散度・影響範囲を冷静に把握します。

  • 投稿の一次情報を収集(発信元・日付・内容)
  • 拡散スピードと到達範囲をソーシャルリスニングで解析
  • 社内関連部署(現場・広報・法務)へ即時共有

この「確認・整理・報告」の流れをあらかじめ仕組み化・自動化しておくことで、初動判断の精度とスピードを大幅に高めることができます。

2. 社内連携:法務・広報・CSのトライアングル体制

初動の遅れは、多くの場合「誰が動くか」が決まっていないことに起因することが多いです。
危機時には、以下の3部署が同時稼働する体制を整えます。

部署

主な役割の例

広報

一次声明作成・メディア対応

法務

投稿内容の違法性・削除依頼判断

カスタマーサクセス/CS

問い合わせ窓口対応・顧客説明

部署間連絡の遅延を防ぐには、日常的なシミュレーションが不可欠です。

3. SNSモニタリング体制の整備

SNSモニタリング体制を整えることで、小さな投稿の段階でリスクを察知し、「炎上の芽を摘む」ことが可能になります。
また、顧客の声をリアルタイムに把握することでサービス改善やブランド信頼の強化にもつながります。

3. 拡散防止と沈静化の実践

1. 組織的対応フローを明確化する

炎上時に最も混乱を招く原因の1つは”発言権の分散”です。
広報・法務・CS・代理店の間で“指揮系統”を定めることが、二次炎上防止につながります。

フェーズ

担当

主なタスク

初期検知

CS・監視担当

投稿内容の収集と報告

対応判断

法務・広報

削除要否・声明方針決定

外部対応

広報

公式発信・報道対応

顧客対応

CS

説明・フォロー・個別返信

特にSNSでは、個人担当者が不用意に返信してしまうリスクがあります。「誰が・いつ・何を」発言するかを事前に明文化することが重要です。

2. 投稿削除・通報対応の実務ポイント

誹謗中傷虚偽情報の削除を求める際は、証拠保存と法的根拠の整理が欠かせません。
削除依頼が難しい場合は、プラットフォームへの通報も選択肢です。動画配信やライブ配信ではコメント欄が荒れるケースも多く、人の目によるリアルタイム監視が有効です。

3. 顧客への説明のコツ

沈静化の成否を分けるのは「トーン」です。
事実確認中であっても、誠実な一次声明を出すことで、不要な憶測を防げます。誤情報が拡散した場合、最も大切なのは「正しい情報を、冷静に、信頼感をもって伝える」ことです。

広報文では次の3点を押さえましょう

  1. 事実確認中であることを明言
  2. 根拠のある説明を簡潔に提示
  3. 顧客・関係者への影響への配慮を示す

例:現在、SNS上で当社に関する投稿がございますが、事実関係を確認中です。お客様にご心配をおかけしておりますことをお詫び申し上げます。確認でき次第、公式サイトにてご報告いたします。

“正確さ”“スピード”の両立こそが信頼回復の第一歩です。

4. 再発防止と社内体制づくり

1. クライシスコミュニケーション研修の導入

「炎上の経験」「次の防波堤」に変えることが再発防止の基本です。
想定シナリオに基づく研修を通じて、誰が発言し、どの順序で動くかを確認しましょう。目的は企業が炎上や不祥事などの危機に直面した際、迅速で的確な情報発信ができるようにするためです。

過去の自社の事例や、同業他社事例を元にすると臨場感が出てきます。その中で、社内での情報共有メディア対応・謝罪・説明の方法を実践的に学びます。
こうした研修を通じて、初動対応の質を高め、組織として一貫したメッセージ発信ができる体制を築くことができます。

2. シナリオ別炎上対策例

[シナリオ①] SNS上で誤情報・デマが拡散した場合

想定状況
事実と異なる情報(誤報・加工画像など)がSNSで拡散。企業や個人の信用を損ねるリスク。

対策例:

  1. 初動対応
    ・拡散状況モニタリング(SNS分析ツール・検索トレンド確認)
    ・感情的な反論は避け、冷静に「事実確認」を最優先

  2. 公式発信
    ・公式SNS・Webサイトで「事実確認」を明確に発表
    ・曖昧な表現を避け、第三者の視点でも信頼できるトーンで説明

  3. プラットフォームへの削除要請
    ・明らかな虚偽・誹謗中傷はX(旧Twitter)、Instagram、YouTubeなどに通報・削除要請
    ・弁護士を通じて発信者情報開示請求も検討

  4. メディア対応
    ・一部メディアに誤情報が記載された場合、訂正報道・削除依頼を行う

[シナリオ②] 自社や従業員の不適切発言・行動で炎上した場合

想定状況
従業員のSNS投稿や内部動画が批判を受け、ブランドイメージが毀損

対策例:

  1. 迅速な事実確認と謝罪
    ・早急に関係者からヒアリング
    ・誤魔かさず、公式声明で「事実」「対応方針」「再発防止策」を公表

  2. 当事者の処分・教育
    ・社内規定に基づく懲戒・研修
    ・企業の社会的責任として、改善の姿勢を示す

  3. SNS運用ルールの見直し
    ・社員向けガイドライン作成(プライベートSNSの注意点含む)
    ・炎上リスクを想定した社内研修を定期的に実施

[シナリオ③] 口コミサイト・レビューでの悪評が拡散した場合

想定状況
Googleマップや食べログ、Xなどで悪意ある書き込み・誤解を招くレビューが拡散

対策例:

  1. 事実確認と冷静な対応
    ・実際の利用履歴・対応記録を確認
    ・感情的反論はNG。丁寧なコメント返信で誠実さを示す

  2. 改善策の提示
    ・事実であっても、改善点があれば明確に説明
    ・「お客様のご意見を真摯に受け止め、◯◯を改善いたしました」と発信

  3. 意図的な誹謗中傷への対応
    ・同業他社や匿名荒らしの可能性があれば、法的手段も視野に

  4. ポジティブ情報の発信
    ・実際の利用者の声・事例を積極的に紹介し、信頼回復を図る

[シナリオ④] 過去の炎上・不祥事が再燃した場合

想定状況
過去の出来事が再度SNSで話題になり、再炎上の兆し

対策例:

  1. 過去の対応を整理して再説明
    ・「当時どのように対応し、どう改善したか」を公式に再提示
    ・隠すよりも「学びと変化」を伝える方が信頼を得やすい

  2. 再炎上防止のモニタリング
    ・SNSのキーワード監視を強化
    ・ネガティブワードが増えた段階で早期対応

  3. メディア戦略
    ・広報・PRチームが一貫したメッセージで対応
    ・メディアへの説明資料をあらかじめ用意しておく

[シナリオ⑤] 競合・第三者からのネガティブキャンペーン

想定状況
競合や匿名アカウントが意図的に自社を貶める投稿を拡散

対策例:

  1. 事実関係の徹底調査
    ・投稿元の特定、内容の正否を確認
    ・明確な虚偽なら、法的措置も検討

  2. 一貫した広報発信
    ・「当社の立場」「事実」を明確にする公式発表
    ・感情的に反応せず、信頼できる情報源としての姿勢を維持

  3. 第三者評価の活用
    有識者コメントや外部メディアの取材で客観的評価を得る
    “想定シナリオ”を整理することで、現場担当者が迷わず動ける指針を作ることができます。

3. 外部モニタリング・レピュテーション管理の活用

全方位のリスク監視を自社で完結させるのは困難です。
外部の監視・分析を組み合わせることで、社内の見落としを補うことができます。
特に有効なのは以下の3カテゴリです。

  1. SNSモニタリング代行: 24時間検知+異常値レポート
  2. 口コミ・レビュー分析:Googleレビューや転職サイトのスコア推移監視
  3. レピュテーションSEO:誤情報対策と検索順位コントロール

外部サービスを活用することで、社内は「判断と対応」に専念できます。

まとめ|「想定外」をなくすために。日常的な監視と備えがブランドを守る

SNS時代の風評被害は、「もし起きたら」ではなく「いつ起きてもおかしくない」時代のリスクです。
ブランドを守るには、常時監視・迅速対応・社内訓練の3つを継続的に回すことが欠かせません。

  • 小さな投稿も見逃さないモニタリング
  • 部署を横断した連携体制の確立
  • 日常的な訓練とマニュアルの更新

これらを習慣化することで、企業は“想定外の炎上”を未然に防ぎ、レピュテーションを長期的に守ることができます。
たった一つの投稿で揺らぐ時代にこそ、「備えの仕組み化」こそ最大のブランド戦略です。

アディッシュの支援

アディッシュでは、企業の風評被害・炎上リスク対策を支援するモニタリングソリューション「MONI」を提供しています。
24時間365日の監視体制や広告審査支援など、豊富な実績をもとに多角的なサポートを行っています。
SNSリスクやレピュテーション管理に課題を感じている方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

アディッシュのモニタリングソリューション「MONI」

ライター

アディッシュのモニタリングソリューション「MONI」

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