SNSは企業のプロモーションにおいて欠かせないものになりました。しかし公式アカウントや、勤務先を明示した従業員のアカウントが炎上した場合のダメージは深刻なものです。企業がSNSによる情報発信に取り組む上で押さえておきたい注意点を作成しました。
■SNSに書き込む前に見返したい注意点
いわゆる”ネット炎上”のきっかけはSNSの外と中の両方にあります。
SNSの外で発生する炎上の火種としては、食品への異物混入や従業員の不適切な対応などが例として挙げられます。これらの話題がSNSで拡散され、公式アカウントにも厳しい意見が寄せられ、炎上状態となります。
一方でSNSでの発信内容そのものを原因とする炎上も発生します。過去には配慮を欠いた投稿などにより謝罪する結果となった事例もありました。
今回はこちらのSNSの中から発生する炎上を防ぐために、注意すべきポイントを整理しました。日々のSNSの更新においてどのような点に注意すべきでしょうか。
これまでに弊社がSNSのリスク対策サポートを行ってきた経験から注意したい内容をまとめました。
- 生き方や信条に関わるテーマに不用意に触れていないか?
※サービスや企業の思想に紐づく場合はこの限りではない - 個人的な意見を会社の顔として発信していないか?
- 人を不快にさせる不適切な表現を用いていないか?
- 不適切な投稿タイミングになっていないか?
- 投稿内容は公開して問題のない情報のみか?
- 自社のイメージダウンにつながる発信となっていないか?
- 違法行為や迷惑行為を疑われる投稿になっていないか?
- 誤投稿をしていないか再度チェック
前編では1~4について、次項より解説します。
■生き方や信条に関わるテーマに不用意に触れていないか?
X(旧Twitter)などSNSにおいては日々活発な議論が行われています。企業の公式アカウントや従業員がこれらの議論に参加するとトラブルにつながりかねません。
特に以下のようなテーマには慎重さが求められます。
・政治や宗教に関する話題
・差別につながりかねない話題
・セクシャリティに関する話題
・戦争など世界の問題についての話題
これらのテーマに沿った製品やサービスを扱う企業もあります。また、企業の社会的責任としてこれらのテーマに取り組むこともあるかもしれません。これらのテーマを扱うことが必須である場合には、注意してメッセージを発信することになるでしょう。熟慮することなく話題性などでこれらのテーマを扱うとリスクが高くなります。
また無意識にこれらのテーマに触れてしまうことのないように注意が必要です。
中でもジェンダーに関してはこれまでにも数多くの炎上事例がありました。かつての「男らしさ」、「女らしさ」などの価値観が時代遅れになっていることに気づかずに問題視されることがあります。「アンコンシャス・バイアス(=無意識の偏見)」という言葉に注目が集まっていますが、自身の「当たり前」が本当に他者にとっても「当たり前」と言えるかを注意したいです。
まとめとして、上記の様に意見が対立しやすいテーマは、必要がなければ避けたほうが良く、扱う際には注意が必要です。また、これらのテーマについて深く知ることで、不用意に触れないことが望ましいです。
■個人的な意見を会社の顔として発信していないか?
自社の製品やサービスについての情報以外についてもSNSに書き込むことがあるでしょう。公式アカウントの担当者や従業員の好きなもの等の個性が発揮される様な、何気ない投稿も人気を集めています。
しかし個人的な意見であっても公式アカウントから発信される以上は会社の意見と受け取られる可能性があります。また従業員個人のアカウントでも勤務先として社名を出していれば、会社の顔として意見を書き込んでいることになります。
例えば「自身の応援しているスポーツチームについての書き込み」はどのような影響が考えられるでしょうか?
当該チームを応援するユーザーからは好意的な反応が期待できます。しかし一方でライバルチームのファンにとっては嬉しくない内容かもしれません。単に「どこのスポーツチームが好きか?」という程度の話に感じるかもしれませんが、スポーツは白熱しやすく敵味方がはっきりと別れてしまうことからテーマとして要注意と捉えるSNS担当者もいらっしゃるようです。
自社が特定のチームを支援しているというケースは話題として出すことに問題はないと考えます。また、公式SNSのキャラクターやスポーツの特性次第で、あえて対立することで楽しめるケースもあるので、一概にNGではありません。
別の例として「自分の嫌いな食べ物」について語ることはどうでしょうか?
その食べ物が好きな人もいるため、言い方次第では誰かを不快にさせてしまいます。何かしらについて、ネガティブな内容は共感を得る一方で反感を持たれるリスクがあります。
前項で述べた「慎重になるべきテーマ」についても社名を出して意見を書き込んだ場合に、それは会社としての方針を固定してしまうことにつながりかねません。
もしも「差別はダメ」というような正しいことだったとしても、社会問題は複雑であり、100パーセントの支持を得ることは難しいでしょう。
個人的な意見は内容が正しいかどうかではなく、企業の顔として発信することが相応しいかどうかという点に注意したいところです。
■人を不快にさせる不適切な表現を用いていないか?
テーマとしては問題無いとしても、表現の仕方で炎上するケースもあります。
「ポリティカルコレクトネス(通称:ポリコレ)」という考え方の浸透により、多様性に配慮した表現を使うことが当たり前になりました。例えば、「Ladies and Gentlemenなどのお決まりのフレーズも性的マイノリティーへの配慮から使用を注意する企業も増えてきています。
親しみやすさが特長であるSNSにおいては、くだけた表現が用いられます。家族や友人と会話するような表現を用いた結果、炎上してしまうケースもあります。。このようなリスクを避けようとしてかしこまったトーンになってしまうと面白くないSNSになってしまいます。そのため親しみやすくも人が不快にならない表現を考えなければなりません。
かつては許容されていた表現も時代の変化とともに「不適切」と評価が変わっている可能性もあります。常にアンテナ高く情報を仕入れて、そのような変化に気がつくことが重要です。
家族や友人との日常会話においても、相手が「何かおかしい」と感じているかもしれません。そのような違和感は相手の表情や言葉に表れます。これを見逃さずに自分の常識について考える機会にしてみるのはいかがでしょうか。
もちろんSNSにおいて発信する前に内容を見返すことも重要です。複数人でチェックすればそれだけ多様な視点で問題点を確認できるため、リスクを下げることができます。
■不適切な投稿タイミングになっていないか?
テーマや表現に問題は無くても、投稿タイミングを誤ったばかりに炎上するという事例も過去には複数ありました。
例えば自社内でニュースになるレベルのトラブルが発生している状況下では、SNS運用も慎重になる必要があります。顧客に何かしらの被害が発生しているときに、何気無い日常を切り取った投稿は不適切と言わざるを得ません。
騒動が大きい場合には企業そのものへの厳しい目が向けられています。従業員の私的な投稿であってもプロフィールに社名を記載している場合には慎重さが求められます。
また、投稿そのものに慎重にならなければならないタイミングもあります。自然災害や大きな事件などの発生時には予定されていた投稿スケジュールを見直すべきでしょう。SNSの投稿予約機能を利用している場合には特に注意が必要です。
公式アカウントであれば1ヶ月などの単位で投稿スケジュールを計画されると思います。その際に投稿日として適切かを考慮することが求められます。突発的に投稿する場合にも今はタイミングとして炎上要素がないかという点について社内外を確認することが望ましいです。
■まとめ
企業のSNS公式アカウント、もしくは従業員の投稿においては慎重になるべきテーマが存在します。また強すぎる主張で反感を持たれないように注意したいところです。
個々の表現や投稿タイミングにも炎上の要素はあるため、リスクはないかという点について繰り返し確認することが望ましいでしょう