2024年10月1日に消費者庁により令和5年改正景品表示法が施行されました。今回の法改正では、求められた場合、広告表示の根拠となる資料の開示をしなければなくなります。また、課徴金制度が厳しくなるため、広告を扱う広報担当者やマーケティング担当者は法改正の内容を理解しておきましょう。
今回は令和5年改正景品表示法についてわかりやすく解説します。事業者が取り組むべきことも解説しているため、対応する際にお役立てください。
[はじめに]景品表示法とは
出典元:「事例でわかる景品表示法 不当景品類及び不当表示法ガイドブック」(消費者庁)(2024年10月14日に利用)
景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止)とは、事業者に広告の不当表示禁止や景品類の制限を行い、消費者が商品を自主的かつ合理的に選べることをサポートする法律です。
次のような表示方法や景品提供方法が規制されています。
- 「りんご100%」と表示しているが、りんご果汁はほとんど入っていない(優良誤認表示)
- 「自社が最も安い」と表示しているが、他社サービスの方が安い(有利誤認表示)
- 「当社の商品を飲めば必ず痩せる」など合理的な根拠がないのに表示する(不実証広告規制)
- 景品類の限度額以上のものを景品にして集客する(景品類の制限及び禁止)
違反した際の罰則として、100万円以下の罰金(直罰)が新設されました。また、罰せられた場合は、直接的な罰以外にも、大きな損害を被ることになるため、広報担当者やマーケティング担当者は景品表示法と改正内容について理解を深めておきましょう。
2024年景品表示法改正の概要
出典元:「不当景品類及ぶ不当表示防止法の一部を改正する法律 概要」(消費者庁)(2024年10月14日に利用)
景品表示法は1962年に制定されましたが、社会情勢や経済の変化に応じて法律の内容が都度見直されています。2024年10月1日には事業者の違反行為を抑制するために「令和5年改正景品表示法」が施行されました。
名称 | 令和5年改正景品表示法 |
概要 | 事業者の違反行為を抑制し、消費者が安心して商品を購入できるようにするための改正案 |
改正内容 | (1)事業者の自主的な取組の促進 -確約手続の導入 -課徴金制度における返金措置の弾力化 (2)違反行為による抑止力の強化 -課徴金制度の見直し -罰則規定の拡充 (3)円滑な法執行の実現に向けた各規程の整備等 -国際化の進展への対応 -適格消費者団体による開示要請規定の導入 |
公布日 | 2023年5月17日 |
施行日 | 2024年10月1日 |
令和5年改正景品表示法の詳細内容
広報担当者やマーケティング担当者、令和5年改正景品表示法についてかみ砕いて解説します。
事業者の自主的な取組の促進
消費者が被害を受けた際、すぐに被害が回復されるように「確約手続の導入」「課徴金制度における返金措置の弾力化」が新たに定められました。
確約手続の導入
今後、景品表示法に違反した場合でも、計画書を作成して消費者に対して返金したり、同じトラブルが起きないように措置したりすれば、場合によっては行政処分を受けずに済むようになります。これを確約手続と呼びます。
消費者の被害回復の時間短縮のために、確約手続きが導入されることになりました。
出典元:「確約手続に関する運用基準」(消費者庁)(2024年10月14日に利用)
確約手続に関する運用基準は「消費者庁の景品表示法関係ガイドライン」に掲載されています。
確約手続の注意点
確約手続は、全ての事業者が行えるわけではありません。
、過去10年間に行政処分を受けている事業者、不当表示を故意で行っており悪質と判断された事業者は対象外となります。
課徴金制度における返金措置の弾力化
消費者に対する返金方法は現金だけでなく、電子マネーやクオカードが選択できるようになりました。これを課徴金制度における返金措置の弾力化といいます。これまで、景品表示法に違反した後に消費者に返金などした場合は、その分を課徴金から控除できる仕組みになっていました。
しかし、消費者に返金する事業者が極めて少ない状況でした。このような現状を変えるために、消費者の被害が回復されるように返金方法の選択肢が増えました。
課徴金制度における返金措置の弾力化の注意点
消費者に対する返金方法として現金だけでなく電子マネーやクオカードが選択できるようになります。しかし、地域限定や期間限定の電子マネーやクオカードは対象外です。なぜなら、地域限定や期間限定の電子マネーやクオカードだと消費者が不利益を被るためです。そのため、地域や期間が限定されていないもので返金するようにしましょう。
違反行為に対する抑止力の強化
令和5年改正景品表示法では、違反する事業社数を減らすために「課徴金制度の見直し」と「罰則規定の拡充」が行われました。
課徴金制度の見直し
課徴金制度の見直しで「売上の算定方法」と「課徴金の算定率」が変更されました。
(1)売上の算定方法
景品表示法に違反し場合、商品・サービスの売り上げの3%を納付しなければなりません。
しかし、売上データを保有していない場合の売り上げの算定方法が問題となっていました。この問題を解決するために、今後は計算できる期間を日割り計算して推定されるようになります。つまり、一定期間の売り上げが良い場合は納付額が高くなります。
(2)課徴金の算定率
景品表示法に繰り返し違反しても、売り上げの3%を納付することとなっていました。しかし、今後は10年以内に法律違反する場合は売り上げの4.5%を納付しなければならなくなりました。
なぜなら、優良誤認表示や有利誤認表示により何らかの利益を得ているとして、法律違反を繰り返す事業者の課徴金を1.5倍に増額されたのです。つまり常習犯の場合は支払い金額がアップします。
罰則規定の拡充
故意に不当表示した事業者は直罰刑(100万円以下の罰金)を科せられるようになります。
従来、不当表示に関しても行政処分を行っていました。行政処分に従わない場合に罰を科していましたが、悪質な業者に対してこのような対応方法で良いのかという疑問が上がっていました。そのため、故意に不当表示した悪質業者には直罰が科せられることになりました。
円滑な法執行の実現に向けた各規程の整備
法改正では、行政処分が円滑に行えるように「国際化進展への対応」と「適格消費者団体による開示要請規定の導入」がなされます。
国際化進展への対応
海外事業者に対しても措置が取れるように整備されることになりました。
なぜなら経済がグローバル化して越境のオンライン販売を行う海外事業者が増えてきたことで、海外事業者にも行政処分を下す必要が出てきたためです。そのため、送達規定の整備がされました。また、海外の当局に対して情報提供を行っていくと発表しています。
適格消費者団体による開示要請規定の導入
適格消費者団体が差し止め請求手続きを行いやすくするために、開示要求が導入されました。
これまでは、その道の専門家ではない適格消費者団体が、特に優良誤認を判断することは、難しい状況でした。
そのため、違反の特定ができない場合でも、適格消費酢や団体は根拠となる資料の開示を要求することができます。(努力義務)
つまり、適格消費者団体が開示要求してきた場合は、不当表示でないことを証明するための根拠となる資料を提出しなければなりません。
令和5年改正景品表示法のポイント
令和5年改正景品表示法の詳細内容を説明しましたが、広報担当者やマーケティング担当者が押さえておくポイントは5つです。
確約手続の流れを把握する
出典元:「【令和6年10月1日施行】改正景品表示法の概要」(消費者庁)(2024年10月14日に利用)
法律に違反した場合でも計画書を作成し、消費者に被害回復、再発防止に務めれることで損害を最小限に留めることができます。この手続きを確約手続と呼びます。行政処分を受けないためにも、確約手続の流れを把握しておきましょう。
[確約手続の流れ]
- 消費者庁が景品表示法に違反していないかを調査する
- 景品表示法に違反する疑いの通知が届く
- 60日以内に事業者が措置計画書を作成して消費者庁に申請する
- 消費者庁により措置計画書が妥当であるかをチェックされる
- 消費者庁により措置計画書が認定される
- 事業者は措置計画書に沿って実行し、報告する
- 措置命令、課徴金命令が免除される
電子マネーを導入する
消費者に対する返金方法として現金だけでなく電子マネーやクオカードが選択できるようになりました。そのため、景品表示法の違反に備えて電子マネーを導入することをおすすめします。事業者が電子マネーを導入すると、次のようなメリットが得られます。
- キャッシュレス決済を希望する顧客を集客できる
- 店舗の会計時間を短縮できる
- 会計ミスや現金管理の負担を軽減できる
確約手続で消費者の被害回復をする際に電子マネーがあると便利です。そのため、電子マネーの導入を検討してみてください。電子マネーの中でも、ユーザー数が多いのはPayPayです。
出典元:『PayPay』
PayPayは、2024年8月10日時点で6,500万人を突破しています。
表示の根拠となる資料を保管する
令和5年改正景品表示法により、適格消費者団体による開示要求が導入されます。開示要求された場合は、広告表示の根拠となる資料を提出しなければなりません。根拠となる資料を提出できなければ法律違反とみなされるケースもあります。そのため、広告表示で使用した資料は大切に保管しておくようにしましょう。
紙で保管するより電子保存した方が瞬時に必要な資料を取り出しやすくなるため、おすすめです。
景品表示法を学び直す
令和5年改正景品表示法により、課徴金の算定率1.5倍になります。また、故意と判断された場合は直罰刑になるなど刑罰が重くなります。そのため、法律違反の不安がある方は景品表示法を学び直しましょう。
出典元:「事例でわかる景品表示法不当景品類 及び不当表示防止法ガイドブック」(消費者庁)(2024年10月14日に利用)
景品表示法を学び直したい方は、消費者庁の「事例でわかる景品表示法不当景品類 及び不当表示防止法ガイドブック」がおすすめです。どのような事例が、不当景品や不当表示に該当するかわかりやすくまとめられています。
広告のチェック体制を強化する
景品表示法の知識を保有していても、消費者に誤解を与えてしまう表示をしてしまう恐れがあります。そのため、広告のチェック体制を強化しましょう。広告の制作者だけでなく、他の人によるWチェックを行うことをおすすめします。
また広告のチェック体制を強化する場合は、専門家の意見を取り入れるとリスクを軽減しやすいです。
景品表示法に関する相談なら「アディッシュ」
景品表示法に関して不安がある方はアディッシュの広告審査サービスをご利用ください。
広告審査サービスとは、掲載する広告内容が不当表示にならないかを審査するサービスです。広告審査は属人化しがちですが、広告審査の基準を作成して横展開し、審査業務の負荷を軽減するお手伝いも可能です。
アディッシュは景品表示法の改正のたびに知識をアップデートしています。そのため、令和5年改正景品表示法に向けて準備したいとお考えの方は、お気軽にご相談ください。
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まとめ
2024年10月1日には令和5年改正景品表示法が施行されます。適格消費者団体から広告表示の開示を求められたら関連資料を提出しなければなりません。また、悪質だと判断された場合は直罰が科せられることになりました。そのため、広報担当者やマーケティング担当者は、この機会に景品表示法を学習し直すことをおすすめします。
アディッシュの広告審査サービスを提供しています。当社のサービスを利用すれば、令和5年改正景品表示法に備えることができます。そのため、広告知識に対して不安があるという方は、ぜひ弊社にご相談ください。
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