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2019.11.19

コミュニティサイトのリスク対策設計をポリシーアーキテクトが解説

弊社・アディッシュのポリシーアーキテクトが解説するリスク対策設計シリーズ。前回はSNSのリスク対策設計(※)について解説しましたが、今回はコミュニティサイトのリスク対策設計について解説していきます。コミュニティサイト運営者はどのようにリスク対策に向き合っていくべきなのでしょうか。

※SNSについて解説した前編は「リスク対策設計をポリシーアーキテクトが解説:SNS編」をご覧ください。

コミュニティサイトとは?

こんにちは。アディッシュでポリシーアーキテクトをしている田中です。

今回のテーマはコミュニティサイトにおけるリスク対策ですので、まず最初にここでいうコミュニティサイトとはどのようなものか、いくつか列挙します。

・マッチングサイト
個人間で需要・供給をマッチングさせるためのサービスです。その取り扱いテーマも幅広く、恋愛・出会い系のサービス、個人のスキルを販売するサービス、何かをシェアリングするためのサービスなど、数え切れないほどのサイトが存在します。

・フリマアプリ(サービス)
いわゆるフリーマーケット(フリマ)をネットサービス上で行うもので、ここ数年ですっかり消費者の生活に定着し、幅広い種類の品物が個人間で取引されています。

・掲示板
特定のテーマを置いた掲示板上で匿名のユーザーが意見を交わすというシンプルな形態で、インターネット上のコミュニティとしては古くからあります。

・Q&Aサイト
掲示板に似ていますが、ユーザーが掲げた質問や相談に対して他のユーザーが回答を返すというQ&A形式で情報を蓄積していくサイトです。

・レビューサイト
さまざまな商品やサービスに対する購入者・利用者が口コミ評価を登録することで成り立つサイトです。カテゴリーやエリア等で条件にあった店舗・商品・サービスを比較検討するために使われます。「グルメ」「旅」「映画」など特定のテーマ・カテゴリーに絞ったサイトも存在します。

・比較サイト
複数のオンラインショップやオークションサイトから特定の商品やサービスの情報を集め、価格や特徴、ユーザー評価など比較しやすいように列記したサイトのことです。レビューサイトと同じように、幅広いカテゴリーのものを取り扱うサイトから、特定のテーマに絞って掲載するものまでさまざまな規模のものがあります。レビューサイトなどの情報を二次的にまとめたものもありコミュニティサイトのカテゴリーに属さない場合もあります。

ほかにはソーシャルゲームのコミュニティのように、より明確に共通の関心を持ったユーザーが集う類のものもあります。スマートフォンやSNSの普及とともにコミュニティサイトも多くの人の生活に浸透しつつあります。自ら積極的に投稿はしていなくても、普段からこれらのサービスやアプリを利用しているという方は少なくないのではないでしょうか。

コミュニティサイトで発生するリスク例

それでは実際にどのようなことが問題になるのか、具体例をあげながら考えてみましょう。

・マッチングサイト
ネットビジネスへの勧誘や個人情報の収集(無課金での連絡先の交換を含む)など、本来の目的とは別の目的で参加しているユーザーが他のユーザーとトラブルを起こすケース。「未成年者」など参加条件を満たしていないユーザーの登録や違法行為が問題になることもあります。

・フリマアプリ
違法な物品の出品トラブルが最も大きなリスクでしょう。偽物や転売を禁止された物品などによりニュースで話題になることもあります。また、取引に関するユーザー同士のコミュニケーションでのトラブルもあげられます。音信不通になって代金が支払われないという金銭的な被害以外にも、故意に悪い評価をつけたり一方的に攻撃的なコメントを投稿したりといった迷惑行為が問題となることもあります。

・レビューサイト / 比較サイト
サクラによる偽レビューでランキングを操作し、閲覧者を誘導することで同業者への業務妨害を引き起こすケースや、インセンティブ目的の質の低いクチコミ(文字数稼ぎやコピペなど)によるサイト全体の信頼度の低下などが問題になります。

・掲示板 / Q&Aサイト
ある程度ユーザーに任されていて運営が介入するケースは少ないものの、医療系などテーマによっては健康被害などを引き起こしかねないため、その質が問われるケースがあります。コミュニティサイトの中でも最もユーザー間の誹謗中傷などコミュニケーションによるトラブルが発生するリクスがあるのがこの掲示板 / Q&Aサイトです。

このようにさまざまな場面が考えられますが、運営者は以下の2点を念頭に置いてリスク対策を進める必要があります。

(1)ユーザーによる投稿内容(コメント、画像、動画)のリスク

特定の相手や企業に対する誹謗中傷、他のユーザーに不快な心象を与えるような差別的発言や攻撃的なコメント、個人を容易に特定できる画像、不適切な動画など、ユーザーが投稿した内容そのものに問題がある場合です。

(2)ユーザー間のトラブルのリスク

不適切な目的で登録しているユーザーによる不法行為や、ユーザー間でのコミュニケーションが原因となって名誉を傷つけたり金銭的な損害を与えるような行為が該当します。

コミュニティサイトの理想の運用に必要なリスク対策とは?

具体的なリスク対策を解説する前に、まず理想のコミュニティサイトについて考えてみましょう。コミュニティサイトがビジネス活動である以上、運営者は登録者数を増やすだけでなく、ファンを育てる、あるいは離脱者を抑えるといったコミュニティの活性化に注力することが必要です。つい投稿したくなるような動機付けや仕掛けが考えられているコミュニティは、ユーザーに継続的に楽しんでもらえるように成長していくでしょう。また、楽しさだけでなく居心地の良さも大きなポイントとなります。理想のコミュニティ運営には、ユーザーが投稿しやすい雰囲気や、ユーザー同士でのコミュニケーションが円滑に行われる状態をいかに作り出すかという視点が大切です。

こうした理想のコミュニティは「運営者がユーザーのコミュニケーションを見守り、サイトの方向性をコントロールし、ユーザー同士が問題を解決する状態」に導かれていることです。つまり、参加しているユーザーがそこでのふさわしい振る舞いを理解しているため、安心して発言ができ、お互いにコミュニケーションを楽しめる状況が作り出されているのです。

とはいえ、コミュニティサイトはその目的や特徴、歴史など多種多様で同じものはありません。コミュニティの性質によってユーザー同士がコミュニケーションを行う頻度やその形態は大きく異なります。また、コミュニティの成熟度によっても登録者数の増加、発話促進等の注力したい取り組みは違うでしょう。私もポリシーアーキテクトとしてリスク対策の設計をする際、「サービスの成長段階に合わせる」「サイトの盛り上がりと中身の質とのバランスを考える」のという点は特に意識するようにしています。

このようにコミュニティサイトによっては意識すべき点はありますが、一般的なリスク対策の内容はおおむね以下の2点で共通しています。

(1)ユーザーによる投稿内容(コメント、画像、動画)の監視

公序良俗の観点から許されない内容はもちろんのこと、各コミュニティサイトにおいてどういった表現を問題とするか、そのスタンスについてガイドラインで明示する必要があります。違法性のある投稿やガイドラインに違反する投稿を発見した場合には、都度必要な対応をします。

(2)ユーザー間のトラブルの防止

議論を超えてお互いを罵倒するような言い争いに発展することがあります。このような健全とは言えないユーザー間のトラブルは、大きな騒動に発展し、他のユーザーにとっても安心・快適に利用できる環境ではなくなってしまいます。コミュニケーションの自由を確保しつつも、誹謗中傷の応酬にならないような対処をして、離脱者の防止をする必要があります。

コミュニティサイトのリスク対策の取り組みまとめ

それではコミュニティサイトにおけるリスク対策としての重要な取り組みをまとめてみましょう。

  • ユーザーの投稿指針を明確にし、ガイドラインをサイト上に明示する
  • リスクの発生に備えて、どのように対処すべきかをあらかじめ定め、運営関係者で共有する
  • サイト上でリスクにつながる問題を発見した際は、すみやかに既定の対応を行う
  • トラブル発生の芽を早期に発見できるように監視する

このリスク対策を網羅するのがアディッシュのコミュニティ監視ですが、リスク対策の設計と運用にお悩みでしたら、お気軽にお問い合わせください。
サービスサイト「コミュニティサイト監視」でも詳しく説明しています。

おわりに〜これからの円滑なコミュニティサイト運営に向けての心構え

今後はスタートアップや知名度がまだ高くない企業など、より多くの企業が積極的にコミュ二ティサイトの運営へ取り組むようになると考えられます。この記事をご覧の方の中にもすでにコミュニティサイトを運営中、新規にコミュニティサイトを立ち上げる予定、とさまざまな方がいらっしゃるでしょう。
最後に、コミュニティサイトを円滑に運営するために大事な心構えを2つほど紹介して結びとします。

1.削除対応は「重い」。長期的な視点で学びへつなげる。

リスク発生時の対応の一つに「投稿の削除」があります。自社サービス上のコメントの削除自体は簡単ですが、とても重い対応であるということを念頭に置いておきましょう。投稿者に相当の悪意・害意があって投稿したとは限りませんし、消された側もその理由が分からなければ、不当な扱いを受けたと感じても不思議はありません。削除する場合にはその理由が分かるようにユーザーへ伝えましょう。

こうした対応でルールが明確になり、ユーザーの今後の学習につながります。長期的にユーザーと関わるコミュニティ運営者には、こうした視点で一つひとつの対応を丁寧にしていく姿勢が求められるのです。

2.最初から完全な対策は難しいもの。リスク対策は段階的に。

取り掛かる最初の一歩で懸念されるのが、とりあえず始めてみることに重点が置かれリスク対策を後回しにしてしまうということです。いざ始めてみると、新規サービスでは厳格なルールがないために、問題かどうか曖昧な投稿への対応に苦慮することもあるでしょう。一般的にみても最初は自由度が高いことが多いので、ある程度は仕方がないことです。しかし、サービスが成熟し、発生したリスクへの対応をつみ重ねるに連れ、段階的に対策を絞り込むことができるようになります。

コミュニティを育てていく上で、ユーザーに「こういう振る舞いはして欲しくない」という線引きをあらかじめ考えておき、また段階的に自社のコミュニティにあったリスク対策を充実させていく心構えで取り組んでいただけたらと思います。

さいごに

5G時代の到来に伴い、これまで以上に動画配信を活用したコミュニティサイトが増加し、運用者にはリアルタイムかつ大量の情報量に対するリスク対策が必要になることが予想されます。従来の手法では十分な対策ができないという場面も出てくるかもしれません。最前線にいる私たちには、リスク検知や個々の対応をより迅速かつ効率的に実現する手法や技術の研究、ノウハウの継続的なアップデートが求められています。

お客様のリスク対策をサポートし、円滑なコミュニティ運営を支えるために全力で取り組んでいきたいと考えています。コミュニティ運営におけるリスク対策に課題・お悩みのある方は、お気軽にお問い合わせください。

ポリシーアーキテクトの田中のイメージ

アディッシュ株式会社
オンラインコミュニティ事業部
ポリシーアーキテクト
田中 裕一朗

早稲田大学卒業後、モバイルサービス企業を経て、2012年に株式会社ガイアックスに入社。SNS運用のコンサルティング、『ソーシャルメディアラボ』編集長を経て、2016年にグループ会社のアディッシュ株式会社に転籍。クライアント企業が運用するSNSアカウントやソーシャルリスニング、コミュニティサイト等のポリシーアーキテクトに従事。

Writer

この記事を書いた人

アディッシュのモニタリングソリューション「MONI」

ライター

アディッシュのモニタリングソリューション「MONI」

インターネットコミュニティ運用、SNS運用、リスク対策に役立つ情報をお届けします。投稿監視に関連する最新動向や運用設計のポイントをご紹介します。